飯田 典子¹, 小林 紘子¹, 亀谷 里美¹, 中島 英樹¹, 酒巻 文子¹, 稲葉 武¹, 上牧 隆¹, 南木 融¹, 石津 智子², 瀬尾 由広², 川上 康³

Noriko IIDA¹, Hiroko KOBAYASHI¹, Satomi KAMEYA¹, Hideki NAKAJIMA¹, Fumiko SAKAMAKI¹, Takeshi INABA¹, Takashi KAMIMAKI¹, Toru NANMOKU¹, Tomoko ISHIZU², Yoshihiro SEO², Yasushi KAWAKAMI³

¹筑波大学附属病院検査部, ²筑波大学臨床医学系循環器内科, ³筑波大学臨床病理

¹Department of Clinical Laboratory，Tsukuba University Hospital, ²Cardiovascular Division, Institute of Clinical Medicine，University of Tsukuba, ³Clinical pathology，University of Tsukuba

キーワード :

【背景】
僧帽弁閉鎖不全症（MR）において左室は容量負荷を認め，大動脈弁閉鎖不全症（AR）では圧負荷・容量負荷の両者が混在している．Bモード像で局所心筋の歪（strain）を計測できるスペックルトラッキング法は，心筋全層だけでなく心筋の内膜側および外膜側に分離して各々のstrain値を計測できるようになった．
【目的】
本研究の目的は僧帽弁逆流症と大動脈弁逆流症における心筋内Strain分布の相違を検討すること．
【方法】
対象はEF50％以上のMR患者 28名（EF: 66.9±7.7％）とAR患者47名（EF: 63.5±7.2％）と正常対照26名である．スペックルトラキング法は東芝メディカルシステムズ社製のソフトを用いて解析した．左室中部短軸像にてtotral，心内膜側（inner），外膜側（outer）のpeak radial strain（RS）, peak radial strain rate（RSR） peak circumferential strain（CS）, peak circumferential strain rate（CSR）を測定した．また，RS，RSRにおいてinnerとouterの比（I/O）を算出した．さらに，心尖部4腔像にてpeak longitudinal strain（LS）, peak longitudinal strain rate（LSR）を測定した．
【結果】
RSでMR症例は高度群および中等度群でtotal-RSと outer-RS がコントロール群と比較して高値を示した．AR症例では高度群はtotal-RS と inner-RSがコントロール群，中等度群と比較して有意に低値を示した．outer-RSおよびRSRは正常群に比較して中等度群が有意に高値を示した．I/OではMR症例，AR症例いずれも対照群と比較して中等度群，高度群が有意に低値をしめした．CSでMR症例は高度群および中等度群で対照群と比較して有意に高値を示した．また，AR症例で中等度群が他の2群と比較して有意に高値を示し，高度群が有意に低値を示した．LSではMR症例，AR症例とも有意な差は認めなかった．
【結論】
スペックルトラッキング法によって計測した左室壁心内膜側および外膜側ストレイン分布はMR症例とAR症例において相違がみられた．