Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
循環器:心機能3

(S346)

Acoustic Radiation Force Impulseを用いた心筋の硬さの定量評価

Quantitative assessment of myocardial stiffness using acoustic radiation force impulse

浅沼 俊彦1, 増田 佳純1, 平山 秀男2, 中谷 敏1

Toshihiko ASANUMA1, Kasumi MASUDA1, Hideo HIRAYAMA2, Satoshi NAKATANI1

1大阪大学大学院医学系研究科機能診断科学講座, 2持田シーメンスメディカルシステム株式会社-

1Division of Functional Diagnostic Science,Osaka University Graduate School of Medicine, 2Mochida Siemens Medical Systems Co., Ltd.

キーワード :

【背景】
さまざまな心疾患において,局所心筋の硬さの評価は重要と考えられているが,臨床で簡便にこれを評価することは難しい.近年開発されたAcoustic Radiation Force Impulse (ARFI)は,収束超音波パルス(プッシュパルス)を照射し,音響放射圧で組織を押すことで,その組織の硬さを評価する技術である.プッシュパルスで変位させられた組織は,プッシュパルスが止むと元の位置に戻り始めるが,その際にせん断弾性波が発生し,組織の変位方向に対して直角方向に横波として伝播する.このせん断弾性波の伝播速度(Vs)は硬い組織では高値を,柔らかい組織では低値を示すため,これを測定することで局所組織の硬さの推定ができる.ARFIは肝臓などでは既に応用され,臨床での評価が始まっているが,本法で心筋の硬さの評価ができるかは不明である.
【方法】
麻酔開胸犬5頭にて,Acuson S2000(持田シーメンス)を用いて左室短軸像を描出した.短軸上0時(前壁),3時(側壁),6時(後壁),9時(中隔)の位置に関心領域を置き,Vsをそれぞれの領域で30回ずつ測定した(Figure 1).測定は一時的に人工呼吸器を停止させた状態で行ったが,プッシュパルス照射は心電図同期できないため,測定の時相はランダムに行われた.また,エタノールを前壁に注入し,同部位で注入前後のVsを測定した.
【結果】
測定可能であった回数は30回中,前壁10.3(34%),側壁7.0(23%),後壁12.3(41%),中隔3.5回(12%)と,前壁と後壁で高い傾向があった.各領域のVs値は,前壁0.89 ± 0.30,側壁1.02 ± 0.86,後壁1.04 ± 0.57,中隔1.07 ± 0.70 m/sと,前壁と比べ他の領域でばらつきが大きかった.エタノール注入後,前壁のVsは有意に増加した(0.91 ± 0.13 vs. 2.37 ± 0.52 m/s,p < 0.01).
【結語】
動的臓器である心臓ではARFIによるVs測定は困難が予想されたが,前壁では比較的安定した測定値を得ることができた.しかし,他の領域での再現性は十分とは言えず,心電図同期による測定が必須であると思われる.エタノール注入前後では有意な変化が生じていることから,将来的には,本法による心筋の硬さの定量評価は十分可能であると考えられる.