尾原 義和¹, 西本 美香¹, 山本 克人¹, 谷内 亮水², 土井 由賀利², 清遠 由美²

Yoshikazu OHARA¹, Mika NISHIMOTO¹, Katsuhito YAMAMOTO¹, Ryosui TANIUCHI², Yukari TOI², Yumi KIYOTO²

¹高知医療センター循環器科, ²高知医療センター超音波検査室

¹Division of Cardiolory, Kochi Health Sciences Center, ²Division of Ultrasonography, Kochi Health Sciences Center

キーワード :

背景：左房容積は左室拡張末期圧を反映し，左室拡張障害の重症度の指標の一つとされている．しかし左房容積がどのような症例の拡張能評価にも有用であるかはあまり検討されていない．
目的：今回，左房容積による拡張障害の評価を虚血及び非虚血症例で検討を行った．
方法：当院に心不全の診断にて入院となり，左室収縮能が保たれた（左室駆出率50％以上）連続80例を対象とした．心房細動や中等度以上の僧帽弁疾患を有する症例は除外した．使用装置はSIEMENS社製ACUSON Sequoiaを用いて，パルスドプラ法で左室流入血流速波形の拡張早期波（E）と心房収縮波（A）の比（E/A），組織ドプラ法で拡張早期僧帽弁輪速度（E’）を計測してE/E’を求めた．左房容積は心尖部四腔，二腔断層像において左室収縮末期にarea-length法を用いて計測し，体表面積で補正した値を左房容積係数（LAVI）とした．
結果：LAVIとE/Aには有意な相関関係は認めなかった（r＝0.16, p＝NS）がE/E’とは良い相関関係を認めた（r＝0.49, p ＜ 0.0001）．症例の原因疾患から対象を虚血群（n＝30）及び非虚血群（n＝50）に分類して検討を行った．両群間でLAVI，E/A，E/E’に有意差は認めなかった．非虚血群においてLAVIとE/E’は有意な相関関係を示したが（r＝0.53, p ＜ 0.0001），虚血群ではLAVIとE/E’は有意な相関は認めなかった（r＝0.32, n＝NS）（Figure）．
結論：左房容積は左室拡張障害の評価に有用であるが，それは非虚血症例でより有用である．心不全症例における左房容積拡大は虚血による急性の変化よりも慢性の拡張障害を反映している可能性が示唆された．