Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
循環器:心機能2

(S344)

糖尿病症例における左室肥大と収縮期左室捻れ運動の評価

Assessment of left ventricular hypertrophy and systolic torsion in diabetic patients

松原 恵子1, 高山 康夫2, 湯山 令輔1, 吉田 衣江1, 居原田 善司1, 村川 紘介1

Keiko MATSUBARA1, Yasuo TAKAYAMA2, Reisuke YUYAMA1, Kinue YOSHIDA1, Yoshiji IHARADA1, Kousuke MURAKAWA1

1洛西ニュータウン病院循環器科, 2関西医科大学附属男山病院内科

1Department of Cardiovascular Medicine,Rakusai Newtown Hospital,Kyoto,Japan, 2Department of Internal Medicine,Otokoyama Hospital, Kannsai Medical University,Kyoto, Japan

キーワード :

<目的>左室肥大が左室収縮期捻れ運動(Torsion)を増加させることは,大動脈弁狭窄症例で報告されている.また,糖尿病は左室重量の増大を招き,左室肥大をもたらすことが報告されている.そこで,糖尿病症例において,糖尿病によりもたらされる左室肥大がTorsionの亢進を招くか否かを検討し,血糖コントロールとTorsionの関係について評価した.
<方法>対象は糖尿病群52例,正常群16例である.Torsionは2D Speckle-tracking法を用いて,短軸像における心尖部の収縮期回転角度と心基部の収縮期回転角度の差で求めた.心機能の評価として,組織ドプラ法を用いて収縮期のPeak strain rate(Sys-SR)および拡張早期のPeak strain rate(E-SR)を求めた.各strain rateは,心尖部アプローチからの3断面で各壁の心内膜側と心外膜側で計測し,それぞれの平均値を比較検討した.また,糖尿病群においては,血糖コントロールの指標としてHbA1cを用い,HbA1cとTorsionの関係について検討した.
<結果>糖尿病群と正常群の間で,年齢・性別には有意差は認められなかった.LVmassは,糖尿病群139±36gで,正常群の114±24gに比して有意に大きかった(p<0.005).また,Relative wall thicknessも糖尿病群で0.43±0.07と正常群の0.34±0.04に比して有意に大きかった(p<0.001).Sys-SRは両群間で有意差は認められなかった.E-SRは,糖尿病群の心内膜側で有意に低下していた(p<0.05).Torsionは,糖尿病群15.2±5.0degreeで,正常群の14.0±3.9degreeと比較し,やや亢進しているものの有意差は認められなかった.糖尿病群において,HbA1cとTorsionの間にはr=0.34の有意な負の相関関係を認めた(p<0.05).HbA1cとLVmass,Relative wal thicknessおよび各strain rateの間に有意な相関関係は認められなかった.
<結論>糖尿病症例では正常群と比較して,左室重量の有意な増加を認めたが,圧負荷に伴う左室肥大と異なりSystolic torsionの亢進は認められなかった.壁厚が厚く心肥大のみられる糖尿病では,拡張早期のstrain rateは低下し,拡張障害を招く.しかし,壁厚が増加するにもかかわらず左室収縮期捻れ運動の亢進がみられなかったのは,HbA1cとの相関関係が示すように,血糖コントロールの悪化によりTorsionが低下するためと考えられた.