Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
循環器:心機能2

(S343)

Anthracyclineによる心毒性の早期検出に関する検討

Detection of anthracycline-induced cardiomyopathy at early stage

水野 麗子1, 藤本 眞一1, 斎藤 能彦1, 中村 忍1

Reiko MIZUNO1, Shinichi FUJIMOTO1, Yoshihiko SAITO1, Shinobu NAKAMURA1

1奈良県立医科大学総合医療学, 2奈良県立医科大学第一内科

1Department of General Medicine, Nara Medical University, 2First Department of Internal Medicine, Nara Medical University

キーワード :

目的:Anthracyclineによる心毒性は,その本来の有効使用を制限するとともに,原疾患以外に生命予後を規定し得る危険因子となる.従来の報告では,450 mg/m2以上のAnthracyclineの投与が心毒性を招来するとされていたが,近年,さらに低用量でも心毒性が生じることが報告されている.そこで,本研究では,ストレインレートイメージングを用いてAnthracyclineによる心毒性を明らかな臨床症状が出現していない潜在的な段階で検出可能か否かについて検討した.
方法:40例の非ホジキン悪性リンパ腫患者を対象とした.全ての患者は,1)Anthracycline による治療歴を有する,2)Anthracyclineの積算投与量が450 mg/m2未満,3)器質的心疾患の既往を有さない,4)通常の心エコー検査で異常を認めない,5)安静時およびマスターダブル負荷心電図で異常を認めない,以上の5つの条件を満たした.ストレインレートイメージングを用いて心電図上のR波から収縮期最大ストレインレートまでの時間(T-SR)を右室および左室の自由壁,心室中隔において計測し,心室間および心室内におけるmechanical dyssynchronyを評価した.20例の健常者を対照として用いた.
結果:右室および左室の内腔径,左室駆出率については患者群と健常者で差がなかった.また,いずれの計測部位においても収縮期最大ストレインレートは両群間で差は認められなかった.右室自由壁と心室中隔のT-SRの差についても両群間で差は認められなかった.一方,右室自由壁と左室自由壁のT-SRの差は,患者群では健常者群に比して有意に高値を示した.
結論:Anthracyclineによる心毒性の早期段階では,局所心筋の収縮力が保たれている一方,心室間のmechanical synchronyが障害されている可能性が示唆され,本手法により早期検出が可能と考えられる.