竹田 泰治^{1, 2}, 坂田 泰史¹, 東森 充³, 真野 敏昭¹, 大谷 朋仁^{1, 2}, 大森 洋介¹, 上村 大輔¹, 玉置 俊介¹, 金子 真^{2, 3}, 山本 一博^{1, 2}

Yasuharu TAKEDA^{1, 2}, Yasushi SAKATA¹, Mitsuru HIGASHIMORI³, Toshiaki MANO¹, Yomohito OHTANI^{1, 2}, Yosuke OMORI¹, Daisuke KAMIMURA¹, Syunsuke TAMAKI¹, Makoto KANEKO^{2, 3}, Kazuhiro YAMAMOTO^{1, 2}

¹大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学, ²大阪大学臨床医工学融合研究教育センター, ³大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻

¹Department of Cardiovascular Medicine, Osaka University Graduate School of Medicine, ²Osaka University, The Center for Advanced Medical Engineering and Informatics, ³Department of Mechanical Engineering, Osaka University Graduate School of Engineering

キーワード :

【背景】
我々は，線型弾性理論に基づき，心外膜面の変位をもとに算出する指標：Diastolic Wall Strain （DWS） が心筋スティフネス定数と負の相関を示し，非侵襲的に拡張不全症例の左室壁伸展性評価を可能とすることを報告している（Takeda et al. J Card Fail, in press）．（DWS＝（拡張期左室内膜面の変位 拡張期左室外膜面の変位）÷収縮末期左室後壁厚））
【目的】
DWSが拡張不全発症に先行して変化し，心不全発症予見に有用であるか否かを検討する．
方法：ダール食塩感受性ラット15匹に8％高食塩食を与え高血圧群（拡張不全モデル）とし，8匹に普通食を与えN群（対照群）とした．13，17，19週齢に連続的に心エコー検査を行いDWS，midwall fractional shortening （MFS） ，左室流入血流速波形よりE/Aを求めた．19週齢には心エコー検査後に心臓カテーテル検査，肺重量測定を行った．
【結果】
いずれの週齢においても，MFSはN群，HT群の間で有意な差を認めなかった．代償性肥大期である13，17週齢ではE/AはN群に比しHT群で有意に低値を示した．心不全期である19週齢ではN群に比しHT群では左室拡張末期圧の上昇，肺重量の増大を認め，それに伴いHT群のE/Aは偽正常化を認め，N群との間に有意差を認めなくなった．DWSは13週齢にはN群とHT群との間に有意な差を認めないが，E/Aが偽正常化を呈するのに先立ち，17週齢ではN群に比しHT群で有意に低値を示し，19週齢においても継続して有意差を認めた．
結論：DWSは左室圧上昇，肺重量増加といった心不全所見に先立ち変化を認めた．これは拡張不全に先行する左室伸展性の増悪を反映していると考えられ，DWSが拡張不全発症の予見に有用であることが示された．