岩崎 真梨子, 福田 友美, 増田 佳純, 浅沼 俊彦, 中谷 敏

Mariko IWASAKI, Yumi FUKUTA, Kasumi MASUDA, Toshihiko ASANUMA, Satoshi NAKATANI

大阪大学大学院医学系研究科機能診断科学講座

Division of Functional Diagnosis, Osaka University Guraduate School of Medicine

キーワード :

【背景】
心筋のねじれは，心筋線維が心臓の長軸まわりに螺旋状に走行していることにより生じることが古くから知られており，心臓の収縮，弛緩に重要な役割を果たしていると考えられている．近年，スペックルトラッキング法で計測したrotationやtwistを新たな心機能の指標として用いた報告も数多くなされているが，ねじれの動的変化と心筋収縮能との関係は詳細には検討されていない．
【目的】
ドブタミン負荷による心筋ねじれへの影響を評価し，心収縮能との関係を明らかにする．
【方法】
麻酔開胸犬10頭を対象とし，GE社製Vivid7を用いて心尖部（A）と心基部（B）の左室短軸像を描出した．ドブタミン負荷前，負荷時（2.5-7.5 g/kg/min）および負荷終了20分後にてそれぞれの画像を記録しオフライン解析を行った．スペックルトラッキング法から各断面のradial strain（ε_A，ε_B）およびrotation（R_A，R_B）を測定し，一心周期の最大値を計測した．Twistは心尖部と心基部のrotationの差分として算出した．また，カテ先マノメーターにより収縮期最大左室圧（SBP）と左室収縮能の指標として左室内圧曲線の一次微分の最大陽性値（＋dP/dt）を画像取得の際に同時計測した．
【結果】
心拍数，SBP，＋dP/dtはドブタミン負荷により有意に増加した．ε_B，R_A，R_B，twistは負荷により段階的に増加し，7.5 g/kg/minで最大に達した．しかしε_Aは5.0 g/kg/minで最大となり，それ以上は増加しなかった．また，twistは＋dP/dtと良好な相関を示した（r ＝ 0.85, p ＜ 0.0001）．
【結語】
ドブタミン負荷による収縮性の増大とともにradial strain，rotation，twistは増大した．しかし最大負荷時には心尖部のradial strainがそれ以上の増加を示さなかったにもかかわらず，rotationとtwistが増加した．このことは，過度に収縮性を上げたときには壁厚の増加よりも心筋のねじれを増加させることで心拍出増大に貢献していることを示したものと考えられた．