Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
循環器:心機能1

(S341)

2D speckle trackingを用いた川崎病患児の心筋壁運動評価

Detection of left ventricular radial strain in patients of Kawasaki disease by 2D speckle tracking imaging

奥村 謙一1, 2, 吉川 聡介2, 清水 公一2, 川村 尚久2, 岸 勘太1, 森 保彦1, 玉井 浩1

Kenichi OKUMURA1, 2, Sousuke YOSHIKAWA2, Kouichi SHIMIZU2, Naohisa KAWAMURA2, Kanta KISHI1, Yasuhiko MORI1, Hiroshi TAMAI1

1大阪医科大学小児科, 2大阪労災病院小児科

1Department of Pediatrics, Osaka Medical College, 2Department of Pediatrics, Osaka Rosai Hospital

キーワード :

【はじめに】
川崎病急性期においてsubclinicalな心筋障害が存在することは知られているが,従来の心臓超音波検査では検出が困難である.今回我々は川崎病患児における2D speckle tracking imagingを用いた左室心筋ストレインの経時的変化を検討した.
【対象】
川崎病患児30名(男児21名,女児9名).
【方法】
川崎病発症後,治療前(急性期),治療直後(亜急性期),発症後約1ヶ月(回復期),遠隔期の4期に分けて,東芝社製Aplioを用いて心臓超音波検査を行った.乳頭筋レベルの左室短軸断面を描出し,2D speckle tracking imagingを用いて左室自由壁のradial strainを計測した.関心領域は,(1)5.0mm x 5.0mmの大きさで,左室自由壁中央部に設定,(2)3.5mm x 3.5mmの大きさで,左室自由壁内膜側および外膜側に設定した.統計処理はone way ANOVAを用いて行い,p<0.05を有意とした.
【結果】
(1)左室自由壁中央部の急性期のradial strainは,回復期および遠隔期に比べ有意に低下していた(急性期0.49±0.02,亜急性期0.66±0.17,回復期0.70±0.02(p<0.001 vs 急性期),遠隔期0.78±0.01(p<0.001 vs 急性期)).(2)左室自由壁内膜側の急性期および亜急性期のradial strainは,遠隔期に比べ有意に低下していた(急性期0.75±0.19(p<0.001 vs遠隔期),亜急性期0.82±0.17(p<0.05 vs遠隔期),回復期0.87±0.14,遠隔期0.99±0.20).(3) 左室自由壁外膜側の急性期のradial strainは,遠隔期に比べ有意に低下していた(急性期0.18±0.06(p<0.05 vs遠隔期),亜急性期0.20±0.08,回復期0.23±0.11,遠隔期0.28±0.13).(4)急性期のradial strainを100として経時的変化を検討した.内膜側では急性期と比較し回復期および遠隔期において有意な増加を示したが(亜急性期116±33,回復期125±38(p<0.05 急性期),遠隔期140±50(p<0.01 vs遠隔期),外膜側では4群間で有意差はなかった(亜急性期124±77,回復期154±123,遠隔期168±84).
【考察】
川崎病急性期における左室自由壁のradial strainは有意に低下し,回復期および遠隔期にかけて回復していく傾向が認められた.この心筋障害の変化は心筋外膜側より内膜側に有意に認められた.2D speckle trackingを用いた心筋ストレインの計測は,川崎病急性期の心筋障害をより鋭敏に反映していると考えられた.