Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
循環器:CRT

(S340)

新しい2Dストレイン心エコー指標(i-Index)によるCRTレスポンダー予測

A novel Combined Index of left Ventricular Dyssynchrony and Contractility by Speckled Tracking Strain Imaging (i-Index) to Predict Responders to CRT

伊藤 理恵子1, 因田 恭也2, 加藤 香緒里1, 香ノ木 冨美1, 松原 宏紀1, 吉子 健一1, 森下 芳孝1, 平敷 安希博1, 室原 豊明2

Rieko ITO1, Yasuya INDEN2, Kaori KATO1, Fukumi KOUNOKI1, Hiroki MATSUBARA1, Kenichi YOSHIKO1, Yoshitaka MORISHITA1, Akihiro HIRASHIKI11, Toyoaki MUROHARA2

1名古屋大学医学部附属病院 医療技術部臨床検査部門, 2名古屋大学大学院循環器内科

1department of clinical laboratory, nagoya unibersity hospital, 2department of cardiology, nagoya unibersity graduate school of medicine

キーワード :

背景:心臓再同期療法(CRT)は収縮非同期性(dyssynchrony)のある心不全に対する有効な治療法である.しかしながら,これまでの心エコー指標では,CRTに対するノンレスポンダーが30%近く存在しており,多くのノンレスポンダーを除外できない.そのため高価な機器を植え込む前にCRTレスポンダーを見極めることは,患者の治療方針決定のみならず医療経済的も必要である.これまではdyssynchronyを表す指標を中心にCRTレスポンダー検討がされてきたが,心臓収縮性には注意が払われていない.そこでわれわれは新しい指標(i-Index)を考案した.本研究の目的は,2Dストレイン法による心室のdyssynchronyと収縮性を加味した新しい指標(i-Index)が,CRTレスポンダー評価に有用か否かを検討することである.
方法:対象はNYHA・以上の重症心不全で,LVEF<35%,QRS幅>130ms,SPWMD>130msCRTあるいは組織ドップラー法によるmotion delay>65msであり,CRTを行った42症例である.2DエコーをCRT施行前と施行後6ヶ月に記録し,左室6カ所のradial dyssynchrony (ms)とradial strain (%)の積(i-Index)を計算し,CRTレスポンダーを予測できるか否かを検討した.CRT施行6ヶ月後のSimpson法による左室収縮末期容積(LVESV)が15%以上の減少したものをCRTレスポンダーと定義した.
結果:42症例全てにおいてCRTデバイス植え込みに成功した.6ヶ月後にCRTレスポンダーと判定された症例は29例(69%)であった.ノンレスポンダーの比率は31%とこれまでの報告と同様であった.この新しい指標(i-Index)は,レスポンダー3299±1233,ノンレスポンダー1423±899と有意(p<0.001)にレスポンダーで高値であった.CRTレスポンダー予測のカットオフ値を2000に設定すると,感度90%,特異度83%であった.従来の心エコー指標ではこれほど高い感度,特異度は得られなかった.これまでに報告されたdyssynchronyの指標は,左室非同期性の程度を表すのみであった.CRTはdyssynchronyのある心不全に有効であるものの,壁運動自体が極めて低下している場合には効果が十分でないこともある.dyssynchronyだけでなく,心筋収縮性を含めた心エコー指標を用いることにより,CRTレスポンダー予測の精度を上げることができるものと考えられた.
結語:新しい2Dストレイン心エコーによる指標(i-Index)を用いることにより,CRTレスポンダーをこれまでの報告に比べ極めて高率に予測できた.2Dストレイン心エコーによる,心室非同期性だけでなく,心室収縮性を加味した評価が,CRTの効果を予測する上で重要であると考えられた.