酒巻 文子¹, 瀬尾 由広², 石津 智子², 小林 紘子¹, 亀谷 里美¹, 飯田 典子¹, 中島 英樹¹, 稲葉 武¹, 上牧 隆¹, 南牧 融¹, 川上 康², 青沼 和隆²

Fumiko SAKAMAKI¹, Yoshihiro SEO², Tomoko ISHIDU², Hiroko KOBAYASHI¹, Satomi KAMEYA¹, Noriko IIDA¹, Hideki NAKAJIMA¹, Takeshi INABA¹, Takashi KAMIMAKI¹, Tooru NANMOKU¹, Yasushi KAWAKAMI², Kazutaka AONUMA²

¹筑波大学附属病院検査部, ²筑波大学人間総合科学研究科循環器内科

¹Department of Clinical Laboratory, Tsukuba University Hospital, ²Cardiovascular Division, Institute of Clinical Medicine, University of Tsukuba

キーワード :

【背景】
心臓再同期療法（CRT）におけるレスポンダー選択において，tissue Doppler imaging（TDI）法を用いた左室内dyssynchronyの指標は駆出時相内での報告が多い．しかしdyssynchrony を伴った症例において中隔の壁運動が前駆出時相に観察される例を経験する．本研究の目的はCRTレスポンダー予測において，前駆出時相を含めたTDI指標の有用性を従来の指標と比較することである．
【方法】
対象はCRTを施行した50例 （男性34例，63±14歳，QRS 178±41ms，EF 27±9％）．従来の指標として，心尖部3断面の12セグメントにおけるQRS開始点から駆出期最大速度までの時間（Ts）の標準偏差（Ts-SD）と四腔断面の中隔および側壁における最大速度間の時相差（Ts-SL）を計測した．またこの他に計測時相に前駆出時相を含め，中隔の動きをlongitudinal strain rate により能動的壁運動であることを確認したうえで最大速度までの時間（mod. Ts）を計測し，その標準偏差（mod. Ts-SD）および中隔および側壁間の時間差（mod. Ts-SL）を計測した．CRTレスポンダーは6ヵ月後の左室収縮期末期容量変化率（ΔESV）が15％以上減少したものと定義した．
【結果】
29症例（58％）がCRTレスポンダーと診断された．受信者特性（ROC）解析によるレスポンダー予測のカットオフ値，感度，特異度，正診率およびarea under curve （AUC）は表に示すとおりである．前駆出時相を含めたmod. Ts-SD，mod. Ts-SLは従来のTs-SD および Ts-SLに比較しCRTレスポンダーをより正確に予測した．
【結論】
駆出時相に前駆出時相を含めたTDI指標は，能動的壁運動を考慮することでCRTレスポンダー予測に有用な指標となる可能性が示唆された．