木原 千景¹, 村田 和也², 和田 靖明¹, 奥田 真一¹, 田中 健雄¹, 野瀬 善夫¹, 深川 靖浩¹, 岸田 由香里², 松﨑 益德¹

Chikage KIHARA¹, Kazuya MURATA², Yasuaki WADA¹, Shinichi OKUDA¹, Takeo TANAKA¹, Yoshio NOSE¹, Yasuhiro FUKAGAWA¹, Yukari KISHIDA², Masunori MATSUZAKI¹

¹山口大学大学院器官病態内科学, ²山口大学医学部付属病院検査部

¹Department of Medicine and Clinical science, Yamaguchi University Graduate School of Medicine, ²Department of Clinical Laboratory, Yamaguchi University Hospital

キーワード :

【背景・目的】
systolic shuffle（SS）は左室ディスシンクロニーの指標の1つとして知られているが，主に検者の視覚により評価されるため客観性が乏しい．Curved color M-mode（CCM）を用いてSSを客観的に視覚化することにより正常心および伝導障害を有する症例におけるSSの出現の違いを検討し，tissue velocity image（TVI）によるディスシンクロニー評価との比較を行った．
【方法】
正常群および左室伝導障害を有する症例を対象とし，Group A：正常群（n＝7），Group B：右脚ブロック群（n＝8），Group C：収縮能正常の左脚ブロック（n＝9），Group D:左脚ブロックかつ左室駆出率（LVEF）＜35％（n＝11）の4群に分類した．心尖部四腔断面像，心尖部長軸像，心尖部二腔断面像を描出し，組織ドプラ法を用いてCCMおよびTVIを描出した．CCMのそれぞれの断面で収縮期に一方の左室壁が赤色で表示され，対側が青色で表示されるものをSSと定義した．各断面でSSが出現している場合に1点とし，3断面における合計のスコアを計算した．一方，TVIにて心室基部と中部の12点に関心領域を設定し，心電図Q波から最大速度に達するまでの時間の標準偏差（TV-SD）を計測しそれぞれのグループにおける左室ディスシンクロニーの評価を行った．
【結果】
CCMイメージにてGroup Dでは33断面中27断面でSS motionが確認された．一方，group AではSSはすべての断面においてSSの出現は認めなかった．SSスコアはgroup DではA，B，C群に比べて高値であった（2.5±0.8 vs 0.0±0.0, 0.4±0.7, and 0.6±1.0, p＜0.01）．また，TVIを用いたTV-SDも他の3群に比べてD群で高値であった（48.3±11.3 vs 22.4±14.0, 22.4±8.5, 27.4±11.7, p＜0.01）．
【結語】
CCMイメージを用いたSSスコアは従来のTVIを用いた指標と同程度に左室ディスシンクロニーを評価することが可能であった．SSは，左室ディスシンクロニーを簡略かつ客観的に評価する指標となりうることが示された．