Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
循環器:血管(動脈)

(S337)

IVR専用ユニットを使用してのCVポート挿入70例のレヴュウ

Central venous port implantation using the interventional unit with fluoroscopy and ultrasound: Review of 70 cases

杉山 宗弘, 水沼 仁孝, 加藤 弘毅, 鈴木 智大, 苫米地 牧子, 飯島 由紀子

Munehiro SUGIYAMA, Kimiyoshi MIZUNUMA, Koki KATO, Tomohiro SUZUKI, Makiko TOMABECHI, Yukiko IIJIMA

大田原赤十字病院放射線科

Radiology, Ohtawara Red Cross Hospital

キーワード :

【目的】
中心静脈ラインを接続した皮下埋め込みポート(CVポート)挿入は外来化学療法や在宅経静脈栄養を目的としてその設置数が増加している.日本では中心静脈栄養用カテーテル挿入が解剖学的指標を用いて盲目的に穿刺するランドマーク法で行われてきたため,本法は鎖骨下静脈からアプローチすることが多い.しかし,気胸や胸腔内挿入などの合併症が生じた場合には外来での治療という本法の目的から遠ざかる.そのため,CVポート挿入はInterventional Radiology(IVR)を得意とする放射線科に委ねられることが多くなった.当院では2007年10月,あらゆるIVRに対応できる装置(DSA+コーンビームCT+US+生体・照射情報DICOM記録)を導入,本法はすべて超音波誘導下に穿刺し,X線透視を用いて施行されるようになった.今回,この装置を用いたCVポート挿入の技術的成功率と安全性を検討した.
【対象】
症例は2007年10月から2009年1月までにCVポート挿入した70症例.男/女=31/39,平均年齢66.8歳(37-92歳),原疾患は悪性腫瘍57症例(大腸癌22,卵巣癌11,子宮癌6,食道癌4,胃癌4,膵癌3,肺癌2など),その他13症例(短腸症候群,末梢ルート確保困難など).
【方法】
IVR装置はSiemens社製Artisで,Digital Subtraction Angiography:DSAの他,回転撮影からコーンビームCTと3D-angioをLeonaldというワークステーションを用いて作成できる.Sensisという装置で心電図,血圧,脈拍,酸素飽和度を測定,曝斜情報とともにDICOMサーバに記録を送付.Terason社製の超音波装置が内臓され,腹部は3.75MHzコンベックスプローブ,表在は7.5MHzのリニアプローブを搭載.画像は天井吊りモニターに描出され,DICOM対応である.穿刺部は入室後,左右の鎖骨下静脈を観察し,標的とし易い方を選択.使用するキットはバードポート-Tiグローションカテーテルタイプ.皮膚面を消毒後,7.5MHzリニアプローブに消毒カバーを被せ,局所麻酔を行い,穿刺ニードル(18G×7cm)をフリーハンドで超音波誘導下に穿刺.吸引にて静脈血が引けたらば,ガイドワイヤを挿入.X線透視下に上大静脈内へ進めたガイドワイヤに沿わせ,8Frピールアウェイシースを挿入.シース内筒とガイドワイヤを抜去,グローションカテーテルを上大静脈内に挿入.皮下ポケットを作成し,カテーテルをポートに接続して皮下に埋め込み,縫合して手技を終了する.
【結果】
技術的成功率は100%であった.第一術者を放射線科後期研修医が勤めたもの52症例,放射線科専門医が勤めたもの18例で,うち3例は放射線科後期研修医が穿刺不可能で交代したものであった.これら3例の内訳は,穿刺経験不足,鎖骨下静脈血栓閉塞,肥満による血管描出不良であった.穿刺による急性期合併症は,気胸2例,鎖骨下動脈穿刺1例であった.気胸2例はいずれも胸腔ドレナージを要したが,後遺症なく回復.鎖骨下動脈穿刺は圧迫止血で対応し,それ以上の処置を要しなかった.後期研修医が1回目で穿刺成功した症例は42/52症例(80.8%),3回以上穿刺したものは5/52症例(9.6%)であった.
【結語】
表在用超音波プローブとX線透視を用いたCVポート挿入は後期研修医でも安全に施行できることが示された.今後はこの方法を標準手技とするべきと考える.