Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
循環器:血管(動脈)

(S336)

シャント関連手術における超音波ガイド下腕神経叢ブロックの経験

Ultrasound-guided supraclavicular brachial plexus block for shunt operation

柚木 靖弘1, 正木 久男1, 田淵 篤1, 手島 英一1, 種本 和雄1, 鳥海 岳2, 藤田 喜久2

Yasuhiro YUNOKI1, Hisao MASAKI1, Atsushi TABUCHI1, Eiichi TESHIMA1, Kazuo TANEMOTO1, Takeshi TORIUMI2, Yoshihisa FUJITA2

1川崎医科大学胸部心臓血管外科, 2川崎医科大学麻酔・集中治療医学

1Division of Thoracic and Cardiovascular Surgery, Department of Surgery,Kawasaki Medical School, 2Department of Anesthesiology & ICM,Kawasaki Medical School

キーワード :

透析患者数の増加によりシャントに関連した手術数も増加している.われわれは超音波ガイド下の腕神経叢ブロックによるシャント関連手術を施行している.retrospectiveに検討を行ったので報告する.
2007年6月1日より2008年10月31日までに117例の超音波ガイド下の腕神経叢ブロックによるシャント関連手術を経験した.症例は年齢が38歳から86歳(平均68歳),性別が男性62例・女性55例であった.身長・体重ともに測定しえた83例でBMIは14.6から32.7で平均22.6であった.何らかの抗血小板薬を内服している症例は31例(26.5%),ワーファリンの内服症例は11例(9.4%)であった.
超音波ガイド下の腕神経叢ブロックは全例麻酔科指導医が施行した.超音波装置はソノサイト社製iLook25を用い,超音波プローブは7.5MHzのリニアプローブを使用した.穿刺針はHakko Medical Products社製21G 絶縁電極ブロック針を用いた.患者体位は仰臥位で頭部を健側へ傾けた.アプローチは鎖骨上法を原則とした.すなわち超音波プローブは鎖骨上窩で鎖骨と平行からやや立てるような位置にあて,皮膚に対しては垂直からやや背側に傾けた.まず鎖骨下動脈をできるだけ正円形になるように描出し,鎖骨下動脈の外側で円形または楕円形の低エコー性に見える神経の集合体である腕神経叢を同定する.超音波プローブの外側から内側向けて穿刺針を進め,針先が神経叢の近傍に到達した後,局所麻酔薬を注入する.薬液は低エコー域としてみられるが,神経叢周囲全体に広がる(ドーナツサイン)ように針先の深さや方向を変えながら少量ずつ注入した.放散痛や電気刺激による神経叢の確認は行わなかった.局所麻酔薬としては主として0.75%塩酸ロピバカインを用いた.使用量は150〜450mg(平均236mg)であった.麻酔効果をコールドテストで確認した後に手術を開始した.麻酔に要した時間(麻酔開始から手術開始までの時間)は平均29.5分であった.出血・気胸などの手技に伴う合併症は認められず,1例(0.84%)で術中の血圧低下がみられ投薬を要したのみであった.
手術は慢性腎不全に対する内シャント作成術が92例,内シャント閉塞に対する内シャント再建術が22例,人工血管内シャント感染に対する人工血管抜去術が3例,内シャント瘤手術が1例であった.また待機手術99例(84.6%),緊急手術18例(15.4%)であった.出血量は,86例(73.5%)が測定不能,残り31例(26.5%)が10〜296ml(平均99ml)と全体として少量であった.91例(77.8%)で上腕にターニケットを用い手術を施行したが,疼痛の出現なく安全に使用可能であった.21例(17.9%)で追加麻酔薬を必要としたが,平均44.8mgのキシロカインの局所使用で十分対応可能であった.全身麻酔に移行した症例はなかった.
今回の検討はretrospectiveな検討であるが,超音波ガイド下の腕神経叢ブロックはシャント関連手術において有効な麻酔法と思われる.