Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
循環器:血管(動脈)

(S336)

バスキュラーアクセスにおける動脈表在化の血管超音波検査の役割について

A role of the vascular sonography of the superficialized artery in Vascular Access

渡邊 亮司1, 中西 浩之2, 峰 良成2, 藤原 直美1

Ryouji WATANABE1, Koji NAKANISHI2, Yoshunari MINE2, Naomi FUJIWARA1

1済生会今治病院検査科, 2済生会今治病院心臓血管外科

1Clinical Laboratory, Saiseikai Imabari Hospital, 2Cardiovascular Surgery, Saiseikai Imabari Hospital

キーワード :

【はじめに】
バスキュラーアクセスとして動脈表在化を施行した症例の術前,術後の血管超音波検査(US)所見をretrospectiveに検討したので報告する.
【目的】
血管超音波検査にて動脈表在化における術前,術後の血管超音波検査の役割を明らかにすること.
【対象】
2006年1月から2008年12月の3年間にバスキュラーアクセスとして作製した動脈表在化を施行した33例(37〜88歳,平均年齢:71.3±12.3歳)で,男性21名,女性12名であった.
【方法】
動脈表在化を施行した患者に対しての血管超音波検査の目的,検査所見をretrospectiveに検討した.
【結果】
作製前評価;全例USを施行した.作製前の両側上腕動脈の評価において,撓骨動脈・尺骨動脈の高位分岐例を2例認めた.表在化作製した動脈は上腕動脈:32例,撓骨動脈・尺骨動脈の高位分岐例の撓骨動脈:1例であった.動脈表在化作製の理由については,心不全症例:36%(12例) ,表在静脈・深部静脈の狭小症例:64%(22例)であった.
作製後USの観察期間は1〜925日であった.作製後評価では作製後USを施行した28例中,19例で異常所見を認めた.異常の内容(重複あり)は液体貯留:14例,穿刺部壁不整像:5例,穿刺部血腫:5例,穿刺部動脈壁の剥離または解離:8例,穿刺部の瘤化:5例であった.穿刺後出血を1例認めた.
異常所見の発生時期については,液体貯留14例の観察期間は3〜53日であった.液体貯留残存率(Kaplan-Meier法)は,作製後15日目で50%,36日目で0.7%,53日目では0%であった.作製後平均11.2(3-20)日目のUSで認めた.作製後,実際に使用した30例の穿刺開始までの期間は平均24.0±12.8日であった.穿刺開始後の合併症US所見は,穿刺部動脈壁の不整像を穿刺開始後平均114.8日目(22-286)で認めた.穿刺部血腫を穿刺開始後平均160.8(7-336)日目で認めた.穿刺部動脈壁の剥離または解離を穿刺開始後平均159.1(22-287)日目のUSで認めた.穿刺部瘤化を穿刺開始後平均385.2(118-629)日目で認めた.
【考察】
バスキュラーアクセス作製前にて,動脈や表在静脈の評価は,シャントまたは動脈表在化の選択に重要である.心不全患者においてシャント作製は適応不可であり,動脈表在化を選択する重要な項目である.上腕動脈表在化による術前評価については,上腕動脈の走行や性状の評価が重要と思われた.
作製後評価は術後早期に創部周囲の液体貯留の発生頻度が高かった.合併症は穿刺部の異常が認められた.遠隔期に穿刺部動脈壁の不整,血腫,動脈壁の剥離や解離,瘤形成など起こすため,USにて動脈表在化作製後の遠隔期においても定期的な経過観察が必要と思われた.