Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
循環器:血管(内膜)

(S333)

FMDとPWV間,FMDとIMT間の逆相関

Inverse Correlations between FMD and PWV and between FMD and IMT

藤岡 和美1, 大石 実2, 亀井 聡2, 矢野 希世志1, 竹本 明子1, 高橋 元一郎1, 藤岡 彰3

Kazumi FUJIOKA1, Minoru OISHI2, Satoshi KAMEI2, Kiyoshi YANO1, Akiko TAKEMOTO1, Motoichiro TAKAHASHI1, Akira FUJIOKA3

1日本大学医学部放射線医学系, 2日本大学医学部内科学系神経内科学分野, 3藤岡皮フ科クリニック皮膚科

1Department of Radiology, Nihon University School of Medicine, 2Division of Neurology, Department of Medicine, Nihon University School of Medicine, 3Department of Dermatology,Fujioka Dermatology Clinic

キーワード :

【はじめに】
血流依存性血管拡張(flow-mediated vasodilation:FMD)は内皮機能を,上腕足首間脈波伝播速度(brachial-ankle pulse wave velocity:baPWV)は早期動脈硬化の機能的変化を反映するmarkerである.一方,頸動脈内膜中膜複合体厚(intima-media thickness:IMT)は早期動脈硬化の形態学的変化を捉えている.さて,FMD,baPWV,IMTは動脈硬化の良いsurrogate markerとされるが今回我々は,FMD,baPWV,IMT間に相関が見られるかどうかの検討を行った.
【対象と方法】
当院神経内科外来を受診した患者64人(脳梗塞19人,片頭痛12人,頸椎症5人,その他28人)において検討した.FMDは超音波診断装置(UNEXEF18G)を用いて,右上腕動脈で測定した.測定方法はInternational Brachial Artery Reactivity Task Forceのガイドラインに従った.前腕駆血開放によるFMDとnitroglycerin舌下エアゾール(1噴霧 0.3mg)による血管拡張(nitroglycerin-mediated vasodilation:NMD)を測定した.baPWVは血圧脈波検査装置(form PWV/ABI,Colin)を用いて,上腕足首間PWVオシロメトリーによる容積脈波法で測定した.
【成績】
統計学的検討では相関の検定にSpearmanの相関係数とFisherのr to z変換を用い,p<0.05を有意と判定した.
1)FMDと右baPWV間(r=-0.338,p=0.011),FMDと左baPWV間(r=-0.373,p=0.005)には有意な逆相関を認めたが,NMDとbaPWV間には有意な逆相関を認めなかった.
2)FMDと右IMT間(r=-0.587,p<0.001),FMDと左IMT間(r=-0.433,p=0.002)には有意な逆相関を認めたが,NMDとIMT間には有意な逆相関を認めなかった.
3)baPWVとIMT間には有意な正の相関を認めた.右baPWVと右IMT間(r=0.408,p=0.003),右baPWVと左IMT間(r=0.462,p=0.001),左baPWVと右IMT間(r=0.375,p=0.007),左baPWVと左IMT間(r=0.440,p=0.001).
【考案】
今回,動脈硬化のsurrogate markerであるFMD,baPWV,IMT間の相関を検討した.FMD,IMT,baPWVは動脈の異なる場所,動脈硬化の異なる様相を評価している.しかし,動脈硬化はsystemicに進行する病態であり,またこれら3つのmarkerは治療効果判定に有用との報告もある.さらに今回NMDの検討も加えたが,NMDとbaPWV間,NMDとIMT間に相関がみられなかった.この理由として,今回検討した疾患群は平滑筋機能障害が軽度であったことが推測される.NMDは平滑筋機能障害を反映しており,NMDを加えることで早期動脈硬化の詳細なstageの評価が可能となることが推測される.また,これら4つのmarkerを組み合わせることは早期動脈硬化の進行度の判定だけではなく,将来の心血管event,stroke発症の予防,さらには治療効果判定にも有用であると考えた.