Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
循環器:血管(内膜)

(S333)

慢性肝疾患における動脈硬化と血管内皮機能の評価

Arteriosclerosis and Vascular Endothelial Function in Chronic Liver Disease

末永 弘美1, 是永 圭子2, 日野田 裕治2, 坂井田 功3

Hiromi SUENAGA1, Keiko KORENAGA2, Yuji HINODA2, Isao SAKAIDA3

1山口大学大学院医学系研究科保健学系学域病態検査学講座, 2山口大学医学部附属病院検査部, 3山口大学大学院医学系研究科消化器病態内科学

1Faculty of Health Sciences,Yamaguchi University School of Medicine, 2Department of Clinical Laboratory, Yamaguchi University School of Medicine, 3Department of Gastroenterology and Hepatology,Yamaguchi University School of Medicine

キーワード :

【背景】
従来から慢性肝疾患における心血管イベント発症率が低いことは知られているが,慢性肝疾患での動脈硬化の発症やその程度についての意見は現在のところ定まっていない.そこで今回我々は,慢性肝疾患に対して超音波診断装置を用いた動脈硬化の評価を行い,さらに動脈硬化の初期病変として注目されている血管内皮機能についても検討した.
【対象と方法】
慢性肝炎患者17人(60±2 歳),肝硬変患者48人(62±8 歳),コントロール18人(64±2 歳)を対象とした.また,肝硬変患者はChild-Pugh分類にてChild A群19人(63±2 歳),Child B群19人(61±2 歳),Child C群10人(60±3 歳)の3群に分類した.動脈硬化の指標として,頚動脈超音波検査にて内膜中膜複合体肥厚度(intima-media complex thickness: IMT)と血管弾性率(stiffness parameter :β値)を測定し,血管内皮機能の評価には,上腕動脈の血流依存性血管拡張反応による血管径増加率(flow-mediated dilatation: FMD)を測定した.また,心臓超音波検査にて心拍出量(Cardiac output: CO)を測定し,さらに患者血液中の一酸化窒素化合物(NOx)とアデポネクチンを測定した.
【結果】
IMT,β値は各群間に有意差を認めなかったが,FMDでは慢性肝炎群(5.8±1.9 %)がコントロール群(3.4±1.4 %)に比べ有意に高値を示した(p=0.015).NOxでは慢性肝炎群(69.2±43.7 μmol/l)およびChild C(85.8±49.0μmol/l)群が,コントロール群(25.8±25.2 μmol/l)に比べ有意に高値を示した(p=0.002, p=0.003).
アデポネクチンではChild B群(15.9±2.3μg/ml)およびChild C群(19.6±3.5μg/ml)が,コントロール群(4.8±1.9μg/ml)に比べ有意に高値を示した(p=0.0005, p=0.0005).また,肝硬変群におけるFMDとCOは有意な相関関係を示した(R=-0.35, p=0.01).
【結論】
慢性肝疾患では,一般的に動脈硬化の指標とされるIMTとβ値は非慢性肝炎群に比べ有意な差を認めなかったが,慢性肝炎における血管内皮機能は良好に保たれている可能性が示唆された.