福居 健一¹, 赤羽 たけみ¹, 白井 康代¹, 片岡 智栄子¹, 大石 元², 福井 博³

Kennichi FUKUI¹, Takemi AKAHANE¹, Yasuyo SHIRAI¹, Chioeko KATAOKA¹, Hajime OHISHI², Hiroshi FUKUI³

¹奈良県健康づくりセンター内科, ²奈良県健康づくりセンター放射線科, ³奈良県立医科大学第三内科

¹Internal Medicine, Nara Health Promotion Center, ²Radiology Nara Health Promotion Center, ³The Third Department of Internal Medicine, Nara Medical University

キーワード :

【目的】
超音波検査（US）による動脈硬化の評価法は，頚動脈（CA）の計測が標準化されているが，腹部大動脈（AA）の内膜中膜複合体厚（intima-media thickness:IMT）に関する報告例は少ない．第80回・第81回当学術集会にてAAのIMTの観察が動脈硬化の評価に有用であると報告した．今回，同一対象者における AAとCAのIMTの比較検討を行ったので報告する．
【対象】
当施設人間ドック検診にて，スクリーニング腹部USを行う際に，AAとCAを観察した137例（女性68例，男性69例）である．
【方法】
US使用機種は，GE LOGIQ7 Discovery II，使用プローブは中心周波数12MHzの10Lリニアプローブである．AAの観察は，腹壁から比較的近距離で総腸骨動脈分岐直前までとし，動脈前後壁の長軸像と短軸像をハードディスクに記録した．Raw Dataにて，動脈前後壁の描出された範囲で最も肥厚した部分のIMT を計測しAA-Max-IMT （mm）とした．また，Max-IMTを含む3cmの範囲内で，1cmおきの3箇所のIMTの平均をAA-Mean-IMT （mm）とした．CAの計測は後壁側を基本とした．Max-IMTは，左右の総頚動脈（CCA）・CA球部・内CAの最大の計測値をCA-Max-IMTとし，Mean-IMTは，左右のCCAにてAAと同様の方法で行い，最大の計測値をCA-Mean-IMTとした．次に，IMTと年齢・性・1日の喫煙本数×喫煙年数：ブリンクマン指数（喫煙）・1日アルコール量（alcohol）・身体計測値（BMI，体脂肪率，腹囲）・収縮期血圧（S-BP） ・拡張期血圧（D-BP）・総コレステロール（CHOL）・中性脂肪（TG）・HDL-CHOL（HDL）・LDL-CHOL（LDL）・血糖値（BS）・HbA1c・インスリン・HOMA-IR・尿酸・CRP-HSとの関連について検討した．
【成績】
男性の年齢・AA-Max-IMT・AA-Mean-IMT・CA-Max-IMT・CA-Mean-IMTの平均値±sdは，53.2±9.1・1.99±0.94・1.58±0.68・1.03±0.49・0.62±0.29，女性は，50.8±7.1・1.44±0.79・1.16±0.47・0.86±0.32・0.55±0.2であった．IMTと上記検討項目との相関関係は，男性では，AA-Max-IMTと年齢の有意な正の相関，喫煙との弱い正の相関，AA-Mean-IMTと年齢の有意な正の相関，喫煙・alcoholとの弱い正の相関，CA-Max-IMTと年齢・喫煙の弱い正の相関，CA-Mean-IMTと年齢・BSの弱い正の相関を認めた．女性では，AA-Max-IMTと年齢の有意な正の相関，喫煙・CHOL・TG・LDL・HbA1cとの弱い正の相関，AA-Mean-IMTと年齢の有意な正の相関，喫煙・S-BP・CHOL・TG・LDL・HbA1cとの弱い正の相関，CA-Max-IMTと年齢・CHOLの有意な正の相関，腹囲・喫煙・S-BP・D-BP・TG・LDL・尿酸との弱い正の相関，CA-Mean-IMTと年齢の有意な正の相関，腹囲・S-BP・D-BP・CHOL・TG・LDL・尿酸との弱い正の相関を認めた．
【結論】
腹部大動脈のIMTの観察は頚動脈のIMTの観察と同様に動脈硬化の評価に有用であり，動脈硬化危険因子との関連についての検討は病態の理解につながると思われた．