Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
循環器:虚血

(S331)

狭心症患者における経胸壁ドプラ心エコー検査による左冠動脈近位部病変の診断能

Diagnosis of proximal left coronary artery stenosis by transthoracic coronary echocardiography

田端 強志1, 杉山 祐公2, 佐々木 健1, 金 徳男1, 中村 啓二郎2, 清水 一寛2, 野池 博文2, 東丸 貴信2

Tsuyoshi TABATA1, Yuko SUGIYAMA2, Takeshi SASAKI1, Tokuo KON1, Keijirou NAKAMURA2, Kazuhiro SHIMIZU2, Hirohumi NOIKE2, Takanobu TOMARU2

1東邦大学医療センター佐倉病院臨床生理機能検査部, 2東邦大学医療センター佐倉病院循環器センター

1Department of clinical physiology, Toho University Medical Center Sakura Hospital, 2Department of cardiovascular center, Toho University Medical Center Sakura Hospital

キーワード :

【目的】
経胸壁ドプラ心エコー法による冠動脈の描出が可能となり,冠血流速波形の解析から冠循環の評価が行われるようになってきた.冠動脈遠位部は検出率が高く,その血流評価に対する多数の報告がなされているのに対して,冠動脈近位部を評価した報告は少ない.そこで狭心症患者を対象に経胸壁ドプラ心エコー法を用いて左冠動脈主幹部から左前下行枝近位部を描出し,同部位における狭窄診断が非侵襲的に予測可能であるかを検討した.
【対象および方法】
対象は2007年4月から2008年10月までに狭心症の疑いで入院し,冠動脈造影検査前に経胸壁ドプラ心エコー法により左冠動脈主幹部から左前下行枝近位部血流の描出を試みた80例.胸骨左縁左室短軸像の大動脈弁レベルで探触子をやや時計方向に回転させ左冠動脈近位部血流を描出した.速度レンジは,冠動脈血流速に合わせ20-25cm/sec前後とし,狭窄部は加速血流(color aliasing)を伴うシグナルとして同定できるように設定し,パルスドプラ法にて同部の拡張期最大血流速度を計測した.左冠動脈主幹部を観察したのち,左前下行枝近位部の描出距離を分節6入口部から末梢側へと計測した.カラードプラ法による加速血流の有無とパルスドプラ法による拡張期最大血流速度を求め,冠動脈造影検査法による冠動脈有意狭窄の有無とを比較検討した.
【結果】
冠動脈造影検査を施行した80例中,経胸壁ドプラ心エコー法にて左前下行枝近位部の描出が可能であったのは65例(81%)であり,左前下行枝近位部の平均描出距離は19mmであった.この65例中カラードプラにて加速血流を認めたのは14例,認めなかったのは51例であった.加速血流を認めた14例中,冠動脈造影検査で同部位に有意狭窄(≧75%)を認めたのは11例であり,パルスドプラ法による拡張期最大血流速度はすべて90cm/sec以上を示していた.加速血流を認めなかった51例においては1例を除いて冠動脈造影検査で同部位に有意狭窄を認めた例はなかった.経胸壁ドプラ心エコー法と冠動脈造影検査法との比較では左冠動脈近位部と描出範囲は限られてはいるが,少なくともこの描出範囲内では65例中61例と高い一致率(94%)が得られた.
【結語】
経胸壁ドプラ心エコー法を用いた左冠動脈近位部の描出率は比較的高く,カラードプラ法を用いた加速血流の有無と拡張期最大血流速度から冠動脈近位部病変の有無を非侵襲的に予測することが可能と思われる.