Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
循環器:血管(静脈)

(S329)

低価格携帯型エコー装置の災害時エコノミークラス症候群検診への応用

Application of in-expensive mobile ultrasound imaging for health management of “Economy Class Syndrome” in disaster

西條 芳文1, 柴田 宗一2, 榛沢 和彦3, 小泉 勝4

Yoshifumi SAIJO1, Muneichi SHIBATA2, Kazuhiko HANZAWA3, Masaru KOIZUMI4

1東北大学大学院医工学研究科・医用イメージング研究分野, 2宮城県立循環器・呼吸器病センター循環器科, 3新潟大学医歯学総合研究科・呼吸循環外科学分野, 4栗原市立栗原中央病院内科

1Biomedical Imaging Laboratory, Graduate School of Biomedical Engineering,Tohoku University, 2Department of Cardiology,Miyagi Cardiovascular and Respiratory Center, 3Department of Thoracic and Cardiovascular Surgery, Niigata University, 4Department of Internal Medicine,Kurihara Central Hospital

キーワード :

【目的】
災害や地震発生後の避難生活におけるエコノミークラス症候群の診断に,下肢静脈エコーによる血栓検出が有用であることは,新潟県や石川県における地震の発生時に証明されている.現実的な問題点のひとつとして,下肢静脈を検出できる性能の小型エコー装置の台数が限られており,周辺の病院や機器メーカーの貸し出しに頼るとしても,広範囲での災害発生時にはエコー装置の確保が困難である点が挙げられる.本研究では,自治体等が一度に複数台を購入できるような低価格で,長時間のバッテリー駆動が可能な携帯型エコー装置を開発し,下肢静脈血栓のスクリーニングに用いることができるかどうかについて検討した.
【方法】
中心周波数7.5MHzのリニア超音波振動子を5.7インチの液晶モニタを有する本体に直接取り付ける簡易型の超音波診断システムを作製した.本体の大きさは270x184x62mm, 重量は1.9kg,リチウムイオンバッテリー駆動で連続2時間の作業が可能である.この装置を地震発生後のエコノミークラス症候群検診に持ち込み,ユーザビリティーおよび血栓の検出性能についての評価を行った.比較対象として,数社から市販されている小型エコー装置を用い,同一部位を観察した.対象はエコノミークラス症候群検診において検査に同意が得られた3名で,圧迫法で静脈血栓を検出し,2つの装置で検出できるかどうかを比較した.検査は3名の熟練した医師・臨床検査技師が行った.
【結果】
市販されているエコー装置で指摘された静脈血栓の保有者全てで,本研究にて開発した携帯型エコー装置でも血栓が良好に観察された.また,検査者が異なった場合にも,全ての検査者が血栓を検出し得た.装置の駆動時間は約2時間で,スペアのバッテリーも用いることで十分に検診が可能であった.
【結論】
今回作製した試作機にて,検診における下肢静脈血栓の検出は十分可能と考えられた.現在,装置にネットワーク機能を取り込み,災害地で電源,情報ともにワイアレスで使用可能な携帯型エコーとして研究開発を進めている.今後,スクリーニング用としての可能性を探るべく,陰性的中率についても評価を行いつつ,現在市販されているポータブルエコーの4分の1の価格で医療機器としての開発を進める予定である.