Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
循環器:血管(静脈)

(S327)

岩手宮城内陸地震における避難環境と深部静脈血栓症(DVT)

Relationship between deep vein thrombosis ( DVT) and evacuation circumstances in Iwate Miyagi Nairiku Earthquake.

榛沢 和彦1, 柴田 宗一2, 西條 芳文3

Kazuhiko HANZAWA1, Soichi SHIBATA2, Yoshifumi SAIJYO3

1新潟大学大学院呼吸循環外科, 2宮城県立循環器センター循環器内科, 3東北大学大学院医工学研究科医用イメージング研究分野

1Thoracic and Cardiovascular Surgery, Niigata University Graduate School of Medicine, 2Cardiology, Miyagi Cardiovascular Center, 3Biomedical Imaging Laboratory, Tohoku University

キーワード :

 2008年6月14日に岩手・宮城内陸地震が発生し栗原市立中央病院,宮城県立循環器病センター,東北大学,福井大学,広南病院,新潟病院等と共同で避難所の下肢静脈エコー検査と血液検査を行った.下肢静脈エコーはポータブルエコー装置を用いて膝窩静脈を含む下腿静脈を座位で検査し,血栓を認めた場合にDダイマーをELISA法(バイダス)で行った.6月20日と21日に一関市本寺小学校,栗原市栗駒の伝創館,栗原市花山の石南花センターで検査を行った.一関市本寺小学校では31人(平均56.8才)のうち1人,伝創館32人(平均61.5才)のうち2人,石南花センター20人(平均70.9才)のうち3人に血栓が見つかった.避難所全体の検査受診者数73人中6人(8.2%)に認めたが浮遊血栓は石南花センターの避難所のみであった.その後に石南花センターで毎週検査を行い6月28日に4人,7月5日に5人,7月12日に1人に新たに血栓が見つかった.6月20日以降の石南花センターの最大の避難者数は122人であることから少なくとも10.7%に血栓が発生したことになる.また7月5日に見つかった5人のうち2人は6月20日の検査では血栓が無く,避難所で生活している間に血栓が発生することが証明された.また一関市本寺小学校体育館の避難所では部落全体で避難しており親戚や顔見知りであり,避難4日目から一関市が畳と布団を用意したことで安眠できるようになっていた.栗原市栗駒の伝創館は田園の中にあって大きく余裕があり,子供と高齢者を分け,さらに体育館が別にあるなど運動のスペースもあった.また避難所でイチゴジャムを作る等,普段と同じ作業を高齢者に提供していた.石南花センターは湖畔の山間にあって周囲に田畑等なく,遠くからヘリコプターやバスで運ばれてきた顔見知りはいない被災者であった.さらに避難所は狭く隣に寝ている方と接触してしまうくらいであり,また災害対策本部や自衛隊の災害本部が置かれているなど安心感はあるものの慌ただしい環境であった.こうした環境の違いから避難者の精神的ストレスや睡眠環境に差をもたらしDVT発生率の差が出たと考えられた.