Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
循環器:3D

(S326)

リアルタイム3D心エコーによる三心房の評価

Live 3D transthoracic and transesophageal echocardiography for assessment of cor triatriatum sinister.

吉田 路加1, 長谷川 和生2, 石神 弘子4, 近藤 規明4, 田嶋 一喜3, 平山 治雄1

Ruka YOSHIDA1, Kazuo HASEGAWA2, Hiroko ISHIGAMI4, Noriaki KONDO4, Kazuyoshi TAJIMA3, Haruo HIRAYAMA1

1名古屋第二赤十字病院循環器内科, 2長谷川内科循環器内科, 3名古屋第二赤十字病院心臓外科, 4名古屋第二赤十字病院医療技術部

1Cardiovascular Center(Cardiology), Nagoya Daini Red Cross Hospital, 2Internal Medicine, Cardiology, Hasegawa Clinic, 3Cardiovascular Center(Cardiovascular Surgery), Nagoya Daini Red Cross Hospital, 4Medical technology department, Nagoya Daini Red Cross Hospital

キーワード :

三心房は,線維筋性膜により左心房が2つに隔てられている稀な先天性心疾患である.成人では呼吸困難,血痰,起坐呼吸など僧帽弁狭窄症に類似した徴候が主な症状である.一般的には,三心房は2Dエコーにて発見され,評価されている.今回,我々は経胸壁及び経食道リアルタイム3D心エコー,320列のMDCTにて線維筋性膜の解剖学的部位及び開口部を評価しえた症例を経験したので報告する.
 症例 49歳男性,主訴 呼吸困難.現病歴:来院1週間ほど前より感冒様症状あり.来院数日前から起坐呼吸,夜間発作性呼吸困難を認めていた.近医を受診しその際に不整脈を指摘され当院救急外来を受診となった.既往歴:小学生より不整脈を指摘されていたが経過観察となっており詳細不明.その他の既往症なし.身体所見:BP113/88mmHg,HR170回/分・不整,SpO2 98%(O2 3L).頸静脈怒張あり.胸部聴診上,III音を聴取,心雑音なし.両下肺野にcoarse crackleを聴取.下腿の浮腫は認めず.検査所見:胸部レントゲン写真上,肺門部にうっ血,胸水を認め,CTRは56.9%であった.心電図は心房細動で,心拍数は153回/分,心室期外収縮を認めた.血液検査所見では,腎機能は正常であったが,軽度の肝機能障害とビリルビンの上昇を認めた.経過:利尿剤,βブロッカー,カルシウム拮抗薬,ワルファリンにて治療を開始し,心不全は改善した.心不全改善後に施行した経胸壁心エコー検査にて,左心房内に隔壁を認め三心房と診断した.また,同時に左心耳内に径2cm大の血栓様エコーを認めた.抗凝固療法を十分に行った後,三心房の評価及び血栓のフォローのため,経胸壁心エコーの再検と経食道心エコーを施行した.EFは40%から50%へ改善しており,経食道心エコーでも血栓は溶けており認めなかった.線維筋性膜の開口部は心房中隔から左室流出路よりに存在し,肺静脈は4本ともに副室へ開口していた.また,心房細動が持続しており,通常の心臓CTは困難であったが320列CTを使用することにより撮影可能であった.考察:三心房に関し,リアルタイム3D心エコーによる評価と心臓CTによる評価に関する報告がなされている.今回の症例の様に心房細動を有する場合,通常診療に用いられる64列のMDCTでは心臓CTの撮影は困難である.CT撮映に伴う造影剤の使用や放射線被曝の合併症もなく,経胸壁及び経食道の両者からアプローチすることによりリアルタイム3D心エコーで立体構造の評価は十分に行うことができ,心臓超音波検査は三心房の術前評価に非常に有用であると考えられた.