瀧聞 浄宏, 安河内 聰, 梶村 いちげ, 武井 黄太, 田澤 星一, 中野 裕介, 井上 奈緒

Kiyohiro TAKIGIKU, Satoshi YASUKOCHI, Ichige KAJIMURA, Kouta TAKEI, Seiichi TAZAWA, Yusuke NAKANO, Nao INOUE

長野県立こども病院循環器科

Pediatric Cardiology, Nagano Children’s Hospital

キーワード :

【背景】
左心低形成症候群（HLHS）における三尖弁閉鎖不全の重症度評価は治療戦略上の重要な要素であり，三尖弁閉鎖不全の発生機序を把握し，外科的な治療の助けとするには，三尖弁の収縮期における立体的な形態変化の詳細を知る必要がある．
【目的】
HLHSにおける収縮期の三尖弁形態を3次元的に定量解析すること．
【方法】
対象は，HLHS11例（2.5±2.5歳）および健常小児N:13例（4.7±3.9歳，僧帽弁13例，三尖弁6例）診断装置はIE33（Philips社製），X7probeを用いて，心尖部アプローチからfull volumeデータを取り込んだ．ワークステーションはReal View（ワイディ社製）を使用し，収縮中期の時相におけるHLHS群の三尖弁（HLHSTV）とN群の三尖弁（TV）および僧帽弁（MV）の弁葉，弁輪の形態についてannular area:AA, annular height:AH, maximum tenting length:MaxTL, tenting volume:TEVを解析した．データはBSAで補正した．
【結果】
1.すべての症例で3次元の弁表示および形態解析が可能であり，収縮中期における健常児のMVのAA，TEVは，BSAと有意な正の相関関係にあった（p＜0.05）．2. TVとMVですべてのパラメータで有意差な差はなかった．3. HLHSTV のAA（cm2/m2）はMV，TVのそれより有意に大きく（7.7±2.1,4.8±1.3,4.3±2.0, p＜0.01 ），AH（cm/m2）については，HLHSTVがMVと差はないがTVより有意に大きかった．（4.5±1.9,2.9±1.9,2.0±1.0, p＜0.05）一方，MaxTL（cm/m2），TEV（cm3/m2）はHLHSTVがMV，TVより有意に大きかった．（13.7±8.6,5.5±2.7,6.1±3.7, p＜0.05 ）,（1.3±0.8,0.5±0.3,0.5±0.5, p＜0.05 ）TEVが2.2以上の症例では4度の閉鎖不全を示していた．
【結語】
HLHSのTVは，弁自体のbendingはMVとほぼ同様だが，弁輪面積は通常よりも大きく，さらにtentingやtentingの高さも増加しており，それが弁のcoaptationを減少させている可能性がある．