Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
循環器:3D

(S324)

心臓血管外科における術中リアルタイム3D−TEE:3DとxPlaneの使い分け

Intraoperative real-time 3D-TEE in cardiovascular surgery: 3D versus xPlane

渡橋 和政1, 黒田 真彦2

Kazumasa ORIHASHI1, Masahiko KURODA2

1広島大学病院心臓血管外科, 2広島大学病院麻酔科

1Department of Cardiovascular Surgery, Hiroshima University Hospital, 2Department of Anesthesiology, Hiroshima University Hospital

キーワード :

【目的】
我々は,心臓血管外科領域で経食道心エコー法(TEE)を術中モニター,術前診断補完,術中イベントの術中診断・方針決定,手術評価などに用いてきた.最近リアルタイム3D-TEEを心血管手術で使用する機会を得たが,3Dが必ずしも万能ではないとの印象を持つ.この新しいmodalityをいかに活用すべきか,3DとxPlaneそれぞれの役割,限界は何かなど,自験例100例をもとに検討し報告する.
【方法】
2007年12月の導入後,心血管手術で3D-TEEを用いた100例(男性63例,27〜86歳,平均68.6歳)を対象とした.手術の内訳は,冠動脈手術28例,弁膜手術28例,大動脈手術32例,その他12例であった.装置はPhilips社製超音波診断装置(iE33)および3D-TEEプローブ(X7-2t)を用い,①従来の2D-TEEでは得られない情報,②3DとxPlaceそれぞれのメリットについて各手術で検討した.
【結果】
僧帽弁形成術では,surgeon’s viewで両弁尖の形態と動きを観察でき,形成を計画する上で有用であった.弁尖の肉眼像や術野での逆流テストの結果が体外循環前の3D-TEE画像で得られた情報と異なることも稀でなく,逆流テストの評価が必ずしも正しくないことが示唆された.人工弁では 2D-TEEに比べ特記すべき追加情報は得られなかった.先天性心疾患,特に心房中隔欠損症では体外循環前に視点を変えつつ観察可能であり,修復の設計に有用であった.大動脈手術では,解離のフラップやステントグラフトが立体的に見えるが,3Dモードでは背後の構造を隠しかえってデメリットであった.むしろxPlaneモードで2断面の画像を描出する方が病態の理解に有用であった.冠動脈手術では,xPlaneモードで左室を心基部から心尖部まで4方向の壁運動で連続モニターでき,マルチプレーンTEEにないメリットであった.腫瘍性病変は,全体像が立体的に評価できるものの,治療方針を修正する追加情報は得られなかった.また背後の情報が失われ,むしろxPlaneモードが有用であった.カテーテル留置時には肉眼像に近い形で誘導できるメリットはあるが,心臓の壁構造によりカテーテルが隠れてしまい,crop操作が必要となる.しかしカテーテルが移動する速度に操作が追いつかず,かえってガイドとしての質が損なわれる.むしろxPlaneで直交2断面を同時表示することによりガイドが容易になった.従来の2Dモードではプローブ先端の屈曲で走査面を傾けていたが,3D-TEEではトラックボールで走査面を自在に傾けることが可能となり,食道壁へのストレスが軽減されるとともに,プローブ先端の屈曲が食道内で制限されることによる描出の制限が改善された.
【結論】
心血管手術中のリアルタイム3D-TEEは,僧帽弁形成術や先天性心疾患など左房という大きな窓を通して固定した対象を観察する場合には有用で,外科医にとって新しい画像を提供する.しかし大動脈や左室内など比較的狭い腔の中に視点を置く形で描出する場合には,壁構造をcropする操作が必要となり迅速に描出することができない.一方,xPlane表示は従来のマルチプレーンTEEで得られない2断面同時表示が可能であり,これを用いることで情報量が倍増し3D表示の限界を補うものであった.特にカテーテル操作のガイドに有用と考えられた.リアルタイム3D-TEEは,各モードのメリットを活かしながら用いることでその能力を最大限に発揮することができると考えられる.