Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
循環器:3D

(S323)

大動脈閉鎖不全(二尖弁)に対する大動脈弁形成術:リアルタイム3DTEEの有用性

Usefulness of Intraoperative Real-Time 3D Transesophageal Echocardiography: Aortic Valve Repair for Aortic Regurgitation (Bicuspid Aortic Valve)

氏野 経士1, 葛 仁猛2, 吉川 英治2, 尾田 知之1, 片岡 一明1, 南方 謙二2

Keiji UJINO1, Masatake KATSU2, Eiji YOSHIKAWA2, Tomoyuki ODA1, Kazuaki KATAOKA1, Kenji MINAKATA2

1医療法人寿会富永病院循環器科, 2医療法人寿会富永病院 心臓血管外科

1Department of Cardiology, Tominaga Hospital, 2Department of Cardiovascular Surgery, Tominaga Hospital

キーワード :

症例は29歳,男性.
【主訴】
労作時呼吸困難
【現病歴と経過】
生来健康.ラグビーをする際に呼吸困難が激しくなり,徐々に軽労作でも呼吸困難が起こるようになった.近医にて弁膜症を指摘され,当院紹介となる.平成20年10月の心エコー図検査で大動脈弁二尖弁による重症の大動脈弁閉鎖不全(AR)を認めたため,手術目的で当院紹介となる.平成20年12月入院.経胸壁心エコー図所見として,大動脈弁レベルの二次元短軸像で,右冠尖と左冠尖の癒合した前後型の二尖弁を認め,rapheの短縮と逸脱によりeccentricなARジェットを認めた.連続の式で求めたARの逆流量は122ml,逆流率は68%であり,左室拡張末期径/収縮末期径は66.4/46.6mm,左室駆出率(EF)は59.6%であった.以上から重症のARで,若年であり,弁の状態が極めて良好な二尖であったため,平成20年12月10日大動脈弁形成術を施行した.
術中の経食道心エコーモニタリングにはリアルタイム三次元経食道心エコー図(RT3DTEE)(使用装置Philips社製iE-33)を用いた.RT3DTEEでは癒合した弁尖が一部逸脱しており,拡張期に弁が閉鎖した状態でも,逆流弁口が確認できた.大動脈弁形成術は各交連部の縫縮と,癒合弁尖の三角切除および縫縮を行った.人工心肺離脱時,RT3DTEEにて観察したところ,術前とは逆方向の軽度から中等度のARを認めた.無冠尖の一部が延長しているため,一部逸脱があり,ARの原因であると考えた.人工心肺再開し,指摘された無冠尖に対して,わずかな縫縮を行った.2回目の人工心肺離脱時にはARは交連部からわずかに認める程度まで改善したため,終了した.術後も順調に経過し,経胸壁心エコー図検査ではARの増悪は認められず,術後7日で退院した.
【結論】
大動脈二尖弁による大動脈弁閉鎖不全に対する大動脈弁形成術は適応が非常に限られており,その術中心エコー図検査としてリアルタイム三次元経食道心エコーを用いて観察し,診断および治療に非常に有用であった貴重な経験をしたので,報告する.