飯村 隆志, 脇 康治, 村山 直之, 山本 佳子, 中島 秀明, 三竹 毅

Takashi IIMURA, Kouji WAKI, Naoyuki MURAYAMA, Yoshiko YAMAMOTO, Hideaki NAKAJIMA, Tsuyoshi MITAKE

株式会社日立メディコUSシステム本部開発設計部

Development Design Dept. Ultrasound Systems Division，Hitachi Medical Corporation

キーワード :

【はじめに】
病変を診断する際の一つの機能として，硬さ情報を画像化可能なReal-time Tissue Elastography（^*）（以下Elastography）がある．Elastographyは高い診断感度を得ることができるとともに細胞診，組織診等の侵襲的手技の減少に貢献する可能性が示唆されているが，検者の手動圧迫による組織のひずみから像を構築するため，課題は得られる像の手技依存と再現性とされている．
【検討内容】
Elastographyは，2フレームの超音波画像から，相関演算を用いて変位を算出し，ひずみ像を構築するものである．組織ひずみは，圧迫が強すぎる場合は非線形に変化する．非線形的な変化では，組織間のひずみの違いから固さの違いを知ることは困難である為，安定して軽微な圧迫を繰り返すことが重要となる．本研究では，圧迫時のひずみ平均の変化（ひずみ平均カーブ）を解析することにより，Elastography像の再現性について検討を行った．
【手法】
当社フルデジタル超音波診断装置試作機とリニア型プローブEUP-L74Mを使用し，ファントムによる検証を行った．Elastography習熟者と未習熟者がフリーハンドで圧迫を行い，それぞれのひずみ平均の時間変化と得られたElastography像の再現性の比較を行った．また，ひずみ平均の時間変化をリアルタイムに画面に表示し，グラフを参考に圧迫を行った場合に得られたElastography像の再現性について検討した．画像の再現性の評価にはStrain Ratio計測を使用した．
【結果】
ひずみ平均の時間変化を参考にしないで圧迫を行った場合，未習熟者はグラフからストローク，周期が安定しない傾向を示し，習熟者の圧迫と差異があることが分かった（図1）．リアルタイム時にひずみ平均の時間変化を参考にストークと周期を意識して圧迫を行うことにより，未習熟者でもひずみ平均のストロークを小さく，周期をほぼ一定にすることが可能であった．図1-（b）のような圧迫で得られたElastography像は複数フレームにわたり安定した画像が表示されており，Strain ratio計測の結果が複数フレーム間で安定していた（表1）．
【まとめ】
ひずみ平均の時間変化を見ながら圧迫を行うことにより，未習熟者でもストロークや周期が一定の最適な圧迫を行うことができることがわかった．また，その際に得られたElastography像は複数フレームにわたり安定しており，再現性の高い画像であると思われる．ひずみ平均の時間変化を見ながら圧迫を行うことにより，圧迫時の手技依存の軽減の可能性が示唆された．

※Real-time Tissue Elastographyは㈱日立メディコの登録商標です．