Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
基礎:弾性計測

(S316)

集束超音波治療におけるエラストグラフィの有用性について 1

Usefulness of Elastography for Focused Ultrasound Surgery 1

荒井 修1, 4, 阿部 信隆2, 仲本 秀和2, 和田 章秀5, 石井 宏志5, 梅村 晋一郎6, 村垣 善浩4, 伊関 洋4, 佐々木 明3

Osamu ARAI1, 4, Nobutaka ABE2, Hidekazu NAKAMOTO2, Akihide WADA5, Hiroshi ISHII5, Shin-ichiro UMEMURA6, Yoshihiro MURAGAKI4, Hiroshi ISEKI4, Akira SASAKI3

1㈱日立メディコ USシステム本部, 2㈱日立メディコ 応用機器開発室, 3㈱日立メディコマーケティング統括本部, 4東京女子医科大学 大学院医学研究科, 5杉並犬猫病院, 6東北大学 大学院医工学研究科

1Ultrasound Systems Division,Hitachi Medical Corporation, 2Application Development Office,Hitachi Medical Corporation, 3Marketing Department,Hitachi Medical Corporation, 4Graduate School of Medicine,Tokyo Women's Medical University, 5Suginami Animal Hospital, 6Graduate School of Biomedical Engineering,Tohoku University

キーワード :

【背景と目的】
超音波を中心とした多角的診断および即治療を実現するために,オープンMRI手術室内に超音波診断装置を設置し,両モダリティのインタラクティブ運用の検討を行っている.具体的には,集束超音波治療をはじめとする低侵襲局所療法でのモニタリングの一手法として考えている.
特に,超音波はリアルタイム観察が可能であるため,治療モニタリングに最適である.また,Bモードに加えて,Real-time Tissue Elastography※1(以下,エラストグラフィ)で組織弾性の違いを観察することもできる.
今回,集束超音波治療の術中,術後の経過観察におけるエラストグラフィの有用性について検討したので報告する.
【方法】
使用したMRI装置はAIRIS Elite,超音波診断装置はEUB-7500(ともに,㈱日立メディコ製)である.一方,集束超音波治療用のトランスデューサは,半径約3cmの固定焦点型である(NEDO委託研究の試作品※2).ただし,トランスデューサ表面から焦点までの距離は2.8cmである.
(1)加熱凝固ファントムを用いた実験
約55度以上の温度で凝固するファントムに対して集束超音波を照射し,MRI画像(T1像,T2像)と超音波画像(Bモード像,エラストグラフィ像)で確認した.
(2)VX2担がんウサギを用いた実験
大腿部皮下に移植した腫瘍を対象として集束超音波を照射した.腫瘍の大きさは直径約2cm,体表からの距離は約1〜3cmであった.術中および術後にMRI画像と超音波画像を撮像した.
【結果と考察】
(1)に関して,ファントムは,集束超音波の焦点付近が加熱され凝固した.目視では白く変色して観察できた.これが超音波画像で描出可能かを確認するために,エラストグラフィを用いて観察した結果,硬い部位として表示された領域はこの加熱凝固領域とほぼ一致した.従って,熱による変性を観察するためには,エラストグラフィが有効な手段であることが確認できた.
(2)の動物実験においては,腫瘍のうち,集束超音波の熱的作用で凝固したと推察される領域が治療直後のエラストグラフィで硬い部位として表示された.さらに,治療1週間後のエラストグラフィでは,その領域が柔らかい部位として表示された.
【結論】
エラストグラフィは,集束超音波による熱変性部位を描出することができる.ゆえに,集束超音波治療の術中および術後の経過観察および治療効果確認に有用な手段となりうると考えられる.今後更なる検証を進める予定である.

※1Real-time Tissue Elastography,AIRIS Eliteは㈱日立メディコの登録商標である.

※2本研究は,独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの委託研究として実施した.

【参考文献】
1.荻原,仲本,佐々木,窪田; 2008日超医学術集会; 超音波診断装置とMRI装置のマルチモダリティー化検討1