Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
基礎:音響化学

(S315)

バブルリポソームとパルス超音波を用いたソノポレーションに関する電子顕微鏡的検討

A scanning electron microscopic study of sonoporation by single-shot pulsed ultrasound with Bubble Liposomes attached to cells

八木 智史1, 岡田 健吾1, 工藤 信樹1, 萩沢 康介2, 鈴木 亮3, 丸山 一雄3, 山本 克之1

Satoshi YAGI1, Kengo OKADA1, Nobuki KUDO1, Kosuke HAGISAWA2, Ryo SUZUKI3, Kazuo MARUYAMA3, Katsuyuki YAMAMOTO1

1北海道大学大学院情報科学研究科生命人間情報科学専攻, 2陸上自衛隊開発実験団, 3帝京大学薬学部生物薬剤学教室

1Division of Bioengineering and Bioinformatics, Graduate School of Information Science and Technology, Hokkaido University, Sapporo, Japan, 2Test and Evaluation Command, Japan Ground Self-Defense Force, 3Department of Biopharmaceutics,School of Pharmaceutical Science, Teikyo University

キーワード :

【はじめに】
我々はこれまで,細胞に微小気泡が付着した条件ではパルス超音波を1回照射しただけでも細胞膜に穿孔が生じることを示してきた.これらの検討では,主として光学顕微鏡により気泡や細胞の様子を観察してきたが,直径数100 nmのバブルリポソーム(BL)の有用性の検討は,一般の光学顕微鏡では難しい.そこで今回,BLの細胞への付着と超音波照射による細胞膜の変化を,電子顕微鏡を用いて観察を行った結果について報告する.
【方法】
BLとしては,難溶性気体のパーフルオロプロパン(C3F8)をリポソーム(DSPC:DSPE-PEG2K-OMe=94:6)に封入したものを用いた[1].走査型電子顕微鏡(JSM-5300, 印加電圧20 KV)を用いて,細胞単独,気泡を付着させた細胞,その後超音波照射を行った細胞の3種類について観察を行った.細胞としてはヒト前立腺がん細胞を用い,超音波は,中心周波数 1 MHz,最大負圧 1.1 MPa,波数3波のパルス波を1回のみ照射した.気泡を付着させた細胞の観察では,希釈した気泡懸濁液を満たした観察用チャンバの上部に,細胞を一層に培養したカバーガラスを細胞面を下にして蓋をするように貼り付け,90分間待機することにより浮力で気泡と細胞を付着させた.超音波照射を受けた細胞の観察では,超音波照射から約1分後に3%グルタルアルデヒド溶液で細胞を固定し,t-ブチルアルコール凍結乾燥法によって試料を作成した.
【結果】
観察の結果,直径数100 nmの球状の気泡が細胞に付着している様子が観察された(Fig. 1(a)).また,超音波照射後の観察においては,細胞表面に円形や楕円形に近い形の穿孔が起きている様子が見られた(Fig. 1(b)).この穿孔は,細胞単独でも観察された電顕観察用試料の作成過程で生じるアーチファクトとは,形状,発生部位が明らかに異なっていた.ソノポレーションの最適条件の検討には,気泡のサイズとそれによって生じる膜損傷の関連を明らかにすることは重要であり,本検討はその手法を確立する意味で有用と考えられる.
本研究の一部は文部科学省科学研究費(課題番号20240053)により行われた.
【参考文献】
[1]R. Suzuki, et al. , Int. J. Pharm. 2008;354:4955.