山本 将也, 岡田 健吾, 工藤 信樹, 山本 克之

Masaya YAMAMOTO, Kengo OKADA, Nobuki KUDO, Katsuyuki YAMAMOTO

北海道大学大学院情報科学研究科生命人間情報科学専攻

Division of Bioengineering and Bioinformatics，Graduate School of Information Science and Technology, Hokkaido University, Sapporo, Japan

キーワード :

【はじめに】
我々はラット新生仔から単離した心室筋細胞を用いて，心コントラストエコーの際に期外収縮の発生頻度が増加するメカニズムに関し検討を行っている．これまでは，超音波の照射時相と期外収縮の発生頻度の関係を調べるため，心室筋細胞の拍動をビデオカメラの映像信号（NTSC信号）から検出し，超音波の照射時相を決定していた．しかし，拍動検出の時間分解能は映像信号のフレームレートに依存するため（33 ms），通常300〜400 ms程度である心筋細胞の収縮活動を詳細に捉えるには不十分であった．そこで，本研究では時間分解能を向上させた拍動検出装置を作製し，超音波の照射時相と期外収縮発生との関係をより詳細に調べた結果について述べる．
【方法】
作製した装置では，顕微鏡の観察画像上の心筋存在部位にフォトダイオードを設置することにより，細胞の拍動をフォトダイオードに入射する光量の変化として検出する．細胞の収縮によって輝度が変化し始める時点を心筋の収縮運動の開始点とし，これから様々な時間遅れを持たせて中心周波数1 MHz，波数3波のパルス超音波を心筋細胞に照射することで，期外収縮の発生と超音波照射時相の関連を調べた．実験は，微小気泡を加えずに超音波の最大負圧を1.1 MPaとする条件と，微小気泡を加えて最大負圧を0.28 MPaとする2条件で行った．微小気泡としては，プラスチックシェルをもつ直径4〜6μmの気泡を用いた．
【結果および検討】
いずれの細胞でも収縮開始から一定期間は超音波を照射しても期外収縮は発生せず，ある時間閾値を越えてはじめて発生することが確認された．その時間閾値は細胞間で異なり，74〜310 msの範囲に広く分散したが，個々の細胞においては再現性が高く，そのばらつきは平均8.2 msであった．各細胞の時間閾値の平均値は，超音波のみの条件では193.6±67.3 ms（平均±標準偏差），微小気泡を付加した条件で210.3±71.4 msであった．両条件共にばらつきが大きいものの，平均値は良く一致したことから，気泡の有無によらず同じ機序によって時間閾値が決定されていることが示唆された．
本研究の一部は文部科学省科学研究費（課題番号20240053）により行われた．