Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
基礎:音響化学

(S314)

パルス超音波の照射によるオキサリプラチンのアポトーシス誘導効果の増強

Enhancement of apoptosis induction by Oxaliplatin under exposure to short-pulsed ultrasound

渡辺 典子, 工藤 信樹, 山本 克之

Noriko WATANEBE, Nobuki KUDO, Katuyuki YAMAMOTO

北海道大学大学院情報科学研究科生命人間情報科学専攻

Division of Bioengineering and Bioinformatics, Graduate School of Information Science and Technology of Hokkaido University, Sapporo, Japan

キーワード :

【目的】
 Sonoporationは遺伝子導入法として注目されているが,連続超音波の照射自体がアポトーシスを誘導することも知られており,sonoporationにより抗がん剤の効果増強を図る検討が行われている[1].以前我々は,パルス超音波を用いたsonoporationでもアポトーシスが誘導されることを確認し,抗がん剤Taxolの効果増強について検討した[2].今回は,薬剤による増強効果の違いを検討するため,Oxaliplatinを用いて検討を行った結果について述べる.
【方法】
 倒立顕微鏡のステージ上に超音波振動子を備えた水槽を設置し,その底面に穴を開けて観察チャンバとした.チャンバ内を微小気泡とOxaliplatinの懸濁液で満たし,一層にヒト前立腺がん細胞を培養したカバーガラスを細胞面を下向きに貼り付け,気泡を細胞に接触させた.その上で,顕微鏡観察下で超音波パルス(中心周波数1 MHz,波数3波,最大負圧1.1 MPa)を1回のみ照射した.微小気泡としては超音波造影剤Levovistを,抗がん剤にはOxaliplatinを使用し,濃度はそれぞれ5 mg/ml,50 μMに設定した.細胞を載せたカバーガラスは超音波照射後に観察チャンバから剥がして培養用ディッシュに移し,インキュベータ内で培養し,6時間後,および1日後に蛍光染料Hoechst33342を用いて,クロマチンの凝縮,核の断片化を評価し,アポトーシスの発生率を調べた.
【結果および検討】
 超音波照射から1日後のアポトーシス発生率は,Control:超音波と微小気泡共になし(USMB−),抗がん剤なし(OX−)では0.7±0.5%,USMB+(超音波と微小気泡共にあり),OX−では1.7±0.6%,USMB−,OX+では3.1±1.3%,USMB+,OX+では4.8±1.5%となった.Oxaliplatinと超音波を併用した場合には最も高い発生率を示したが,Oxaliplatin単独で用いた場合と比較して有意な差は見られなかった.しかし平均値については,超音波のみの場合とOxaliplatin単独で用いた場合のアポトーシス発生率の和は,超音波とOxaliplatinを併用した条件と良く一致し,Oxaliplatinと超音波の併用に相加効果があることが確認できた.
【結論】
 微小気泡が細胞に接触した状態では,パルス超音波を1回のみ照射するだけでも抗がん剤のアポトーシス誘導効果を増強できることが確認された.今回の実験では超音波照射後,細胞を培養用ディッシュに移す際に細胞が剥がれ落ちた可能性があるため,今後は実験方法の見直しを図り,より正確な評価を行っていく予定である.本研究の一部は文科学省科研費(20240053)により行われた.

【参考文献】
[1]Yoshida T. et al.: Cancer Chemotherapy and Pharmacology. 2008;61:559-567.
[2]Watanabe N. et al.: Proceeding of 10th International Symposium on Ultrasound Contrast Imaging 2008:100.