Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
基礎:音響化学

(S313)

子宮肉腫に対する低出力超音波併用による癌血管新生抑制療法の基礎研究

Basic Research on Antiangiogenic Effect of The Low Power Ultrasound Combination Therapy in Uterine Sarcoma

Choijamts Batsuren1, 江本 まこと2, 長沼 康子1, 立花 克郎3, 瓦林 達比古2

Batsuren CHOIJAMTS1, Makoto EMOTO2, Yasuko NAGANUMA1, Katsurou TACHIBANA3, Tatsuhiko KAWARABAYASHI2

1福岡大学,医学研究科先端医療科学科,産婦人科学教室, 2福岡大学,医学部産婦人科学教室, 3福岡大学,医学部解剖学教室

1Advanced Medicine, Department of Obstetrics and Gynecology, Fukuoka University, Medical school, 2Advanced Medicine, Department of Obstetrics and Gynecology,Fukuoka University, Medical school, 3Department of Anatomy,Fukuoka University, Medical school

キーワード :

目的:子宮肉腫は悪性度が極めて高く,かつ既存の化学療法や放射線療法に対する反応が不良であるため,新たな治療戦略の開発が待たれている.近年,抗癌剤を低用量で頻回に投与するメトロノミック療法が注目されている.メトロノミック療法は抗腫瘍効果だけではなく,血管新生抑制能も有すると報告されている.今回我々は,抗腫瘍剤のメトロノミック療法と低出力超音波照射の併用療法の基礎研究を行った.
方法:in vitroでは,抗腫瘍剤である塩酸イリノテカン(CPT-11)の血管新生阻害作用の有無について,ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)と正常ヒト皮膚繊維芽細胞の血管新生キット(Kurabo)と我々が樹立したヒト子宮肉腫FU-MMT株の共培養を用いて,免疫染色像の画像処理後に定量的に評価した.In vivoでは,ヒト子宮肉腫FU-MMT株をヌードマウス背部皮下に移植し腫瘍形成を確認した後に始める早期治療群と,腫瘍形成が確認してから3週間後に始める後期治療群を作成した.CPT-11(2.5mg/kgまたは,5mg/kg)を腹腔内投与した後,低出力超音波を(1MHZ,2.0w/cm2,週3回)を腫瘍部に照射した.定期的に腫瘍体積を算定し,腫瘍内血流の変化を造影超音波カラードプラ法にて調べ,Image J 1.39u (NIH,USA)で血管密度を解析した.更に,マウス末梢血液中の血管内皮前駆細胞をフローサイトメトリーで測定した.
結果:CPT-11の代謝物であるSN38を低濃度で14日間in vitroで添加した結果,0.05pM,0.01pMではHUVECの管腔形成は有意に抑制された(p<0.001).FU-MMT-3細胞との共培養でも同様の結果が得られた.In vivoでは,早期治療群のCPT-11・5mg/kg投与では全例において腫瘍が消滅し,更に低用量であるCPT-11・2.5mg/kgでも全ての腫瘍の増殖を有意に抑制した.後期治療群では対照(無治療)群と比較して全ての治療群で腫瘍増殖が抑制された.更に,治療開始から1週目にCPT-11・2.5mg/kg+US併用群,CPT-11・5mg/kg+US併用群では血管密度が有意に低下し(p<0.01),
治療開始から5週目では全ての治療群で血管密度が有意に低下していた(p=0.01).循環内のマウス血管内皮前駆細胞の比率は,治療開始後早期に,CPT-11・5mg/kgやCPT-11・5mg/kg+US併用群で低下していた(p=0.024).更に,5週目にはCPT-11・5 mg/kgに対してCPT-11・5 mg/kg+US併用群は有意に血管内皮前駆細胞比率が低下した(p=0.036).全ての治療群において薬剤や超音波による副作用は特に認めなかった.また,治療群の生存日数が対照群と比べて有意に延長した.
結論:悪性度の極めて高い子宮肉腫のマウス移植腫瘍に対して,抗腫瘍剤メトロノミック療法と低出力超音波の併用療法を行った結果,薬剤相乗効果による著明な腫瘍縮小効果が認められ,低出力超音波の薬剤効果増強作用が示唆された.