大内 啓之, 阿部 康彦, 橋本 新一, 川岸 哲也, 神山 直久

Hiroyuki OHUCHI, Yasuhiko ABE, Shinichi HASHIMOTO, Tetsuya KAWAGISHI, Naohisa KAMIYAMA

東芝メディカルシステムズ㈱超音波開発部

Ultrasound Systems Division, Toshiba Medical Systems Corporation

キーワード :

[背景] 我々は3次元speckle tracking systemを開発し，心内膜のCircumferential Strain (CS)やLongitudinal Strain (LS), Torsion, 内外膜間のRadial Strain他，種々の壁運動評価指標の3次元的な解析機能を実現してきた^1）．今回，その中で心内膜の評価に用いられているCSとLSに注目し，CSとLSの両方の成分を持つ局所面積変化率に着目した“Endocardial Surface Area Tracking (Area Tracking)”を開発した(Fig.1)．Area Trackingには，CSやLSのみを評価する場合と比べて以下の様な利点が期待される：
a)どちらか一方のみのStrain値が低下した場合にも異常の検出が可能
b)健常例での値が大きく個体間ばらつきに対して疾患例との識別に有利
但し，ノイズ等の理由で追跡位置に誤差が生じた場合に，どの程度影響を受けるかは不明である．本検討ではArea Trackingの追跡位置誤差に関する影響をCSおよびLSと定量的に比較した．
[方法] CSとLSの値の変化に対するArea Tracking(AT)値の変化を算出し，同じ変化における信号値の差違を求める．次に，CSとLSに±1〜4%のランダムノイズを与えた際のCS，LSおよびATのRoot Mean Square error (RMS)を算出した．20回の反復計算によるRMS算出を20回繰り返して各指標のRMSの平均値と標準偏差を求めた．
[結果] Table1に示す様に同じ変形に対する検出信号はATがCSやLSよりも大きくなる．またFig.2に一例を示す通り，ノイズを与えた際のCS，LSおよびATのRMSの平均値と標準偏差に大きな差異は認めなかった．従ってCSやLSに比べて信号レベルの大きいATは，相対的にS/N比が高くなると期待される．
[まとめ] 新たに開発した“Area Tracking”によって，心内膜の局所壁運動の異常をCSやLSよりも高感度かつロバストに検出できる可能性が示された．今後は本法の生体での有用性の検討を行う予定である．
[参考文献]
1)阿部康彦 「検査と技術」36,10, 904-913 (2008)