Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
基礎:心臓・血管・血流

(S309)

超音波計測融合シミュレーションによる血行力学情報のリアルタイム可視化に関する研究

Real-Time visualization of Hemodynamics by Ultrasonic-Measurement-Integrated Simulation

船本 健一1, 早瀬 敏幸1, 劉 磊2, 小笠原 正文3, 地挽 隆夫3, 橋本 浩3, 見山 広二3

Kenichi FUNAMOTO1, Toshiyuki HAYASE1, Lei Liu2, Masafumi OGASAWARA3, Takao JIBIKI3, Hiroshi HASHIMOTO3, Kouji MIYAMA3

1東北大学流体科学研究所, 2東北大学大学院工学研究科, 3GE横河メディカルシステム株式会社超音波研究室

1Institute of Fluid Science, Tohoku University, 2Graduate School of Enigneering, Tohoku University, 3Ultrasound Laboratory, GE Healthcare

キーワード :

1.研究の目的
新たな血管内血流場の可視化手法として,著者らは超音波計測融合シミュレーションを提案してきた.本研究では,本手法による血管内の血流場および血行力学の情報のリアルタイム可視化を実現するため,実際の頚動脈内の血流解析を題材に計算の高速化に関して検討を行った.

2.超音波計測融合シミュレーション
本手法では血流の超音波カラードプラ計測を行い,計測画像中のドプラ速度が得られた部分を血管内として計算格子を作成する.血流の数値シミュレーションでは,非圧縮性ナビエ・ストークス方程式と圧力方程式を離散化し,有限体積法により解く.この計算過程において,超音波計測によるドプラ速度と計算結果の間の誤差を求め,それを補正する仮想外力を数値シミュレーションにフィードバックし,計算結果を実際の血流場に収束させる.計算に必要な境界条件については,カラードプラ画像の輝度値の和で定義するドプラ強度から各時刻の血流量を推定し,上流端の正確な速度分布は未知として一様平行流を与える(速度分布の影響はフィードバックにより補償される).また,下流端は自由流出,壁面はすべりなしとする.実際には,超音波計測データ取得後の一連の解析と結果出力のすべてを自動で行うプログラムを作成した.

3.実験方法
本手法の高速化には,流体解析および流量推定のそれぞれの収束判定値をある程度大きい値に設定すると良いが,計算精度に対してトレードオフがある.本研究では,これらの値を様々な組み合わせの値に設定し,計算時間を測定した.研究対象としては,疾患を有する実際の頚動脈内の血流とし,GE製超音波診断装置LOGIQ 7および超音波プローブにより取得したカラードプラ画像の各点のドプラ速度データの生データに基づいて解析を行った.本臨床例は自治医科大学の協力によるものであり,本研究に際し自治医科大学のIRB承認を得た.フィードバックを適用する位置は,計算領域の上流端から1/4以降,下流端から1/4までの領域内の全格子点とした.

4.結果と考察
本手法による血流場と血行力学の情報を図に示す.流量推定の収束判定値の最適値をそれぞれ10^-2に設定すると,計算精度を保持したまま計算を短時間に終了できた.この場合,1CPU(1.6GHz)のみを用いて1タイムステップあたり12s,1心周期あたりに換算すると約134秒と計算時間が大幅に改善された.