橋場 邦夫¹, 田中 宏樹¹, 浅房 勝徳²

Kunio HASHIBA¹, Hiroki TANAKA¹, Katsunori ASAFUSA²

¹㈱日立製作所中央研究所メディカルシステム研究部, ²㈱日立メディコUSシステム本部

¹Medical Systems Research Department, Hitachi, Ltd., Central Research Laboratory, ²Ultrasound Systems Division, Hitachi Medical Corporation

キーワード :

【はじめに】
　CMUT（Capacitive Micro-machined Ultrasound Transducer）は，シリコン基板上に設けたナノメートルオーダの空隙を介して超微細な振動膜を多数形成したものであり，次世代超音波トランスデューサとして研究開発が進められている[1][2]．このような構造の静電型トランスデューサは，一般的に広帯域な特性を有している．PZTのような圧電素子をベースとした動電型トランスデューサでは，比較的Q値が大きく，生体より固有音響インピーダンスが一桁大きい．そのため，広帯域な特性を実現するためには整合層が必要であり，より広帯域な特性を実現するためには，通常，多層の整合層が必要になる．一方，CMUTは，その設計自由度から生体の固有音響インピーダンスと同等程度の固有音響インピーダンスに設計することも可能であり，この場合，整合層は不要になる．本報告では，このような構造の違いによって生じるCMUTとPZTトランスデューサとのパルス特性の違いが，画質に対してどのような違いを及ぼすかについて，シミュレーションによって検討する．
【検討内容】
　まず，CMUTと整合層を有するPZTトランスデューサの一般的な等価回路を導き，それぞれのパルス特性を計算した．次に，得られたパルス特性を用いて，それぞれポイント・スプレッド・ファンクションを計算した．これらの結果から，CMUTとPZTトランスデューサのパルス特性の違いとポイント・スプレッド・ファンクションの違いの関係について考察した．さらに，デジタルファントムを用いたシミュレーションにより，これらパルス特性の違いが画質に及ぼす影響を調べた．
【結果及び考察】
　CMUTと整合層を有するPZTトランスデューサでは，その構造の違いに起因して，得られるパルスの群遅延特性に違いが表れ，CMUTに関しては広い帯域に渡って群遅延が一定となる．パルス波形に置き換えれば，CMUTは波形を変化させない電気音響変換フィルタとして作用し，尾引きのない優れたパルス特性が得られる．このようなパルス特性をもとにして得られるポイント・スプレッド・ファンクションは，距離方向，方位方向共にサイドローブが小さくなる．このようなポイント・スプレッド・ファンクションと生体などの被撮像物との畳み込み積分によって得られる画像は，空間分解能やコントラスト分解能に優れた画質になることが示された．
【参考文献】
[1]M. I. Haller and B. T. Khuri-Yakub, 1994 IEEE Ultrasonic Symp., pp.1241-1244.
[2]C. Daft et al., 2007 IEEE Ultrasonic Symp., pp. 411-415.