Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
基礎:デバイス

(S306)

CMUTのパルス特性解析

Theoretical Analysis of CMUT Pulse Echo Characteristics

田中 宏樹1, 橋場 邦夫1, 浅房 勝徳2

Hiroki TANAKA1, Kunio HASHIBA1, Katsunori ASAFUSA2

1日立製作所中央研究所, 2株式会社日立メディコUSシステム本部

1Central Reserch Laboratory, Tokyo, Japan,Hitachi, Ltd., 2Ultrasound System Division, Chiba, Japan, Hitachi Medical Corporation

キーワード :

【はじめに】
次世代超音波トランスデューサとして,CMUT(Capacitive Micro-machined Ultrasonic Transducers)の研究開発が進められている.CMUTは,高度な半導体プロセスを利用し,シリコン基板上に設けたナノメートルオーダの空隙を介して超微細な振動膜を多数形成する.空隙間に電圧を印加することで微細な振動膜が超音波トランスデューサとして機能する.現在広く用いられている圧電型トランスデューサに対し,CMUTは微細加工性や広帯域性に優れ,またCMUTと一体化した様々な集積回路の混載が見込まれている.これらの特徴を利用して,より高画質・高機能な超音波プローブの実現が期待されている.筆者等はこれまで,CMUTの理論解析モデルの構築,シミュレーションおよび評価チップの試作等を行い,トランスデューサ特性と設計パラメータとの関係性を明らかとした[1][2].本報告では,トランスデューサの性能を決める上で重要な指標の一つであるパルス特性について評価する.
【検討内容】
従来の圧電セラミックを用いたトランスデューサの設計においては,トランスデューサの前面に音響整合層は必須である.これは,音響インピーダンスの大きく異なるセラミックと生体の境界に中間的な音響インピーダンスの物質を介在させることで,音響的なミスマッチを低減し,生体への音の伝達効率を向上させることを目的としている.また,音響エネルギーの伝達効率だけではなく,パルス特性を向上させ,より広帯域化を図るために,通常整合層の厚さは注目する周波数の1/4波長程度に設計する.しかし,この方法はある特定の周波数付近においてのみ適用されるため,完全に理想的パルス特性を得ることは難しく,必ずある程度の尾引き現象を生む.
一方,CMUTの特徴のひとつは,その設計の自由度にある.膜の大きさや厚さ,および材料等の組み合わせの選択により,十分広帯域でありながらCMUTの実効的な音響インピーダンスはセラミックなどよりも生体に近い特性が得られる.その結果,整合層を必要としない設計も可能となる.従って,従来のトランスデューサでは得られない良好なパルス特性を実現することができる.本報告では,圧電セラミックおよびCMUTの等価回路を用いて,整合層による周波数感度特性および群遅延特性への影響を解析し,出力されるパルス波形との関係を評価した.
【結果】
整合層の存在により,周波数帯域幅および感度は向上するが,ある特定の周波数において位相が回り,群遅延特性が劣化する.このため理想的なパルス特性を得ることは難しいことが分かった.しかし,CMUTの場合,整合層を使わずとも構造的に広帯域特性を実現する設計パラメータが存在するため,群遅延特性が劣化せず,極めて良好なパルス特性を実現することが可能であることが分かった.
【まとめ】
等価回路を用いたトランスデューサの理論解析により,整合層を必要としないCMUTは本質的にパルス特性に優れていることが示された.本結果がどのように画質へ寄与するか別途報告する.
【参考文献】
[1]田中他,日超医第81回学術集会. 81-A018 (2008).
[2]田中他,日超医第81回学術集会. 81-AP007 (2008).