Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
基礎:マイクロバブル

(S303)

超音波造影剤の流入時間差に基づく新規映像法と肝腫瘍鑑別への有効性検討

Inflow-Time Mapping of Ultrasonic Contrast Agents for Differential Diagnosis of Liver Tumor

吉川 秀樹1, 東 隆1, 佐々木 一昭2, 川畑 健一1, 梅村 晋一郎3

Hideki YOSHIKAWA1, Takashi AZUMA1, Kazuaki SASAKI2, Ken-ichi KAWABATA1, Shin-ichiro UMEMURA3

1日立製作所中央研究所ライフサイエンス研究センタ, 2東京農工大学共生科学技術研究院 動物生命科学部門, 3東北大学工学研究科電気・通信工学専攻

1Central Research Laboratory, Hitachi Ltd., 2Institute of Symbiotic Science and Technology, Tokyo University of Agriculture and Technology, 3Department of Electrical and Communication Engineering, Tohoku University

キーワード :

[背景] Sonazoid造影画像は,肝腫瘍の微細な血流動態の評価に有効である.肝腫瘍の造影パタンは,造影剤投与後の数分間の血管相と約10分後の組織相で大きく異なり,腫瘍鑑別には各相での詳細な画像観察が必要である.特に血管相では,血管及び腫瘍組織の造影過程の差異が重要な観察項目になる.しかし,腫瘍血管,動脈,門脈及び腫瘍組織の造影は数秒の時間差で起こるため,腫瘍全体の血流動態を動画上で観察することは難しい.また動画観察で得た情報はイメージとして術者の頭の中で構成されるため,他者との情報共有ができず情報としての客観性に欠ける.
[目的] 本報告の目的は,血管相での重要な観察項目である,血管及び腫瘍組織の造影過程の差異を画像化するInflow-Time Mappingを提案することである.これまでの二次元造影画像に時間情報を色の違いで付加することで,腫瘍全体の血流動態を示す二次元画像を提供する.また,肝臓にVX2腫瘍を移植したうさぎにSonazoidを投与して提案手法を適用し,実用性評価を行なう.
[実験] うさぎにSonazoidを静脈投与し,造影画像上で造影剤の流入を確認できた直後から約1分間の画像データを取得した.取得した画像データに対し,輝度の時間変化曲線(TIC:Time-Intensity Course)の計測を画素毎に行なった.計測したTICから予め設定する閾値輝度に達する時間を算出し,その値に応じて各画素を色分けしたInflow-Time Mapを構成した.構成したInflow-Time Mapを,動画観察で判別できる血流動態と比較し,実用性を評価した.
[結果] 計測開始から10秒後の造影画像と構成したInflow-Time Mapを図1に示す.腫瘍血管,動脈,門脈の順に造影される過程を,Inflow-Time Map上で色の違いで区別できた.更に,腫瘍内部を走行する血管から腫瘍の外側へ造影剤が染み出す様子も色の違いで確認できた.
[結論] 本技術により,腫瘍及び周辺組織の造影過程を二次元画像として提示でき,血流動態を明確に判断できる.これにより,客観的な情報に基づく高精度な肝腫瘍の鑑別診断が実現できる可能性がある.今後,腫瘍の成長に伴い血流動態がどのように変化するかをInflow-Time Mapで確認し,本技術の更なる実用性検討を行う.