Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
基礎:組織性状診断

(S293)

パラフィン包埋標本作成過程において組織音速に影響を及ぼす因子の検討

The Analysis for the Influencing Factors to the Sound Speed of Myocytes through Paraffin Embedded Process

中村 陽一1, 小林 和人2, 中村 一文3, 草野 研吾3, 穂積 直裕4, 吉田 祥子5, 鈴木 誠1, 西條 芳文6

Yoichi NAKAMURA1, Kazuto KOBAYASHI2, Kazufumi NAKAMURA3, Kengo KUSANO3, Naohiro HOZUMI4, Sachiko YOSHIDA5, makoto SUZUKI1, yoshifumi SAIJYO6

1愛媛県立中央病院循環器科, 2本多電子株式会社研究部, 3岡山大学循環器内科, 4愛知工業大学電気工学科, 5豊橋技術科学大学物質工学系, 6東北大学医工学研究科

1cardiology, Ehime Prefectural Central Hospital, 2medical Division, Honda Electronics Co., Ltd, 3cardiovascular Medicine, Okayama University Graduate School Of Medicine, Dentistry And Pharmaceutical Sciences, 4electrical Engineering Course, Aichi Institute Of Technology, 5materials Science, Toyohashi University Of Technology, 6graduate School Of Biomedical Engineering, Tohoku University

キーワード :

[背景]近年,パルス励起型超音波顕微鏡による超音波組織診断の臨床応用がなされている.本法は凍結サンプルのほかパラフィン包埋切片の測定が可能であるが,組織固定から薄切標本作成までに多くのサンプル処理過程を経るため,各処理作業が組織音速に影響を与える可能性が否めない.我々は各々のサンプル処理過程で組織音速に変化が生じるかどうかを検討した.
[方法]10週齢のラット心を用いて,固定液,パラフィン硬度,アルコール脱水の各過程が組織音速に影響を与えるかどうかを検討した.
①ラット心をOCコンパウンドにマウントした後,凍結薄切標本を作成し組織音速を計測した.続いて凍結薄切標本を10%,20%,30%ホルマリン,カルノア固定液に各々20分間固定し組織音速を測定した.
②同日摘出したラット心を上記の固定液で20分間固定した後,パラフィンブロックを作成した.10μmの薄切標本を作成し組織音速を計測した.
③異なる硬度(Histprep 555,565,580)のパラフィンを3種類用い,固定後の組織音速を検討した.
④凍結標本作成後アルコール脱水を行い組織音速を計測した.音速計測後に再度薄切標本を親水させ心筋音速を計測した.同じ工程を1ヶ月間凍結保存したサンプルで再検証した.
各群の心筋音速を比較検討した.
[結果]
凍結心筋の組織音速は1547±57cm/sであった.
①10%と20%濃度のホルマリン固定は凍結標本に比し組織音速に有意差はみられなかったが,30%ホルマリンやカルノアなど脱水効果の強い固定液では組織音速が有意に高かった.②パラフィン包埋後の組織音速は凍結サンプルに比し約100m/s速くなったが,固定液間の差は減少していた.③パラフィン硬度が低いと音速は有意に高値となった.④凍結薄切標本の音速は脱水により有意に速くなったが,親水により基礎値に改善した.ただし,凍結保存後1ヶ月が経過すると組織音速は有意に高値を示した.脱水後の親水作業で音速は低下するものの基礎値までは回復しなかった.
[考察]
超音波顕微鏡は形態学診断とは異なり組織の音速(弾性)を指標として評価する診断法である.本診断の精度を堅持するには細胞内の水をいかに保持するか(検体処理方法を統一する),もしくはコントロール標本による補正(対比)が重要と考えられた.