Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
基礎:組織性状診断

(S292)

せん断歪み計測による大動脈瘤の性状評価

Evaluation of AAAs by shear strain measurement

坂本 考弘1, ソウ ヒョウ2, 新田 尚隆3, 中谷 敏4, 山川 誠5, 椎名 毅6

Takahiro SAKAMOTO1, Hyo SOU2, Naotaka NITTA3, Satoshi NAKATANI4, Makoto YAMAKAWA5, Tsuyoshi SHIINA6

1筑波大学大学院システム情報工学研究科コンピュータサイエンス専攻, 2筑波大学第三学群情報学類, 3産業技術総合研究所人間福祉医工学研究部門, 4大阪大学大学院医学研究科保健学専攻, 5京都大学大学院工学研究科, 6京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻

1Graduate School of Systems and Information Engineering, Department of Computer Science, University of Tsukuba, 2College of Information Science, University of Tsukuba, 3Institute for Human Science and Biomedical Engineering, Advanced Industrial Science and Technology, 4Graduate School of Medicine, Division of Health Sciences, University of Osaka, 5Graduate School of Engineering, University of Kyoto, 6Graduate School of Medicine Human Health Sciences, University of Kyoto

キーワード :

【背景・目的】
超音波エコー法は,簡便で大動脈瘤拡大進行の経過観察に適していることから,現状でも大動脈瘤診断上重要な手段となっている.現状では大動脈瘤の形状や大きさを目安にしているが,大動脈瘤の外科的治療法における手術適応の時期の評価には,動脈壁自体の脆弱化の程度等のより客観的な指標が必要とされている.本研究では,組織の力学的特性を直接的に画像化可能な超音波エラストグラフィの手法により拡大進行状況と脆弱性を把握し,破綻の危険度の客観的な評価を可能とすることを目指している.
【方 法】
我々はこれまでに先行研究において,拡張複合自己相関法を用い,大動脈血管壁の垂直歪みを計算することで,大動脈壁の性状を把握する試みを続け,ファントム実験および臨床実験においてその妥当性を示してきた[1].しかし,スライス面に垂直な方向への血管壁の変位,腸ガスの影響,プローブから大動脈までの距離の増加などさまざまな要因により,その性能は著しく劣化するため,よりロバストな手法の開発が求められている.
そこで新たな診断指標としてせん断歪みを用いることで大動脈瘤の硬さを推定し,破裂危険性を診断することを試みた.具体的には,拍動による変形前後の大動脈の信号データを取得することで変位推定を行い,その変位を用いて相対的な硬さであるせん断歪み推定を行う.
【結 果】
この提案手法を,まず,健常者の頸動脈を用いて検証した.その結果,せん断歪みが生じていることが確認されるとともに,せん断歪みは最大で20度に近い値となっており,大きく歪んでいることが分かった.次に大動脈瘤患者に提案手法を適用した.図1は腹部大動脈瘤の例である.血管壁と組織との境界と思われる部分が判断でき,さらに動脈壁が硬くなっていることが推測された.これらの結果から,せん断歪みが新たな血管壁性状診断指標となりうる可能性が示唆された.
[1]小宮大輔,山川誠,椎名毅,中谷敏,第78回日本超音波医学会学術集会講演論文集,p.317, 2005.