Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
基礎:組織性状診断

(S292)

光アシスト超音波速度変化イメージング法による生体組織中の目的物質の検出

Detection of the target material in biological tissue by optically assisted ultrasonic velocity-change imaging method

堀中 道, 石橋 賢, 佐野 肇, 櫻井 大輔, 松山 哲也, 和田 健司, 松中 敏行

Hiromichi HORINAKA, Satoshi ISHIBASHI, Hajime SANO, Daisuke SAKURAI, Tetsuya MATSUYAMA, Kenji WADA, Toshiyuki MATSUNAKA

大阪府立大学工学研究科

Physics and Electronics, Osaka Prefecture University

キーワード :

我々は,既に,生体の光吸収断層画像を得るために光アシスト超音波速度変化イメージング法を提案し,基礎実験を行ってきた.本イメージング法は,光照射によって生体組織の光吸収領域に生じる弾性定数の変化を超音波の音速変化として検出し,それを映像化する方式である.本法では,従来の光CTのように光散乱の影響を直接受けないために,生体深部の光吸収断層画像を得ることができる.現在,癌の診断のために光を用いる様々な方法が試みられている.例えば,乳癌における新生血管の生成を早期に検出するために,ヘモグロビンや血管造影剤の分布状態の映像化が行われている.また,癌組織に堆積したナノ粒子の空間分布の画像化も行われている.ナノ粒子を癌組織に選択的に堆積させるために,新生血管を利用する方式と抗原抗体反応などを利用する方式がある.光アシスト超音波速度変化イメージング法の癌診断への応用を考え,高散乱媒質や鶏肉中におけるヘモグロビン,金ナノロッド,半導体微粒子,血管造影剤(Indocyanine Green:ICG)の空間分布の画像化を試みた.例として,ICGを寒天に混ぜて鶏肉中に分散させた試料に,813 nmの半導体レーザー光を照射したときの超音波速度変化画像を図(a)に示す.通常のBモード法では特定できなかったICGの分布領域が描出されている.しかし,その周辺にも光吸収による音速変化が見られる.これは他の鶏肉組織による光吸収によるものと考えられる.そこで,照射光を915nmの半導体レーザー光に変えて超音波速度変化画像を描出した.その超音波速度変化画像を図(b)に示す.図(a)に比べて変化が見られる.図(c)に660nm,813nm,915nmの波長の照射光で得られたICGの温度変化の値を照射光の波長に対して白丸でプロットした.いずれの場合も,試料表面における光照射強度は,生体の安全性を考慮して,0.3W/cm2になるように調整した.図(c)中の実線は分光器を用いて測定したICGの光吸収スペクトルを示している.温度変化は光吸収スペクトルとよく一致していることが分かる.実際の生体組織への応用では,目的物質の光吸収スペクトルに対応した照射光の波長を選択して超音波速度変化画像を得ることによって,目的物質の識別が可能と考えられる.