Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
基礎:組織性状診断

(S291)

二つのレイリー分布を用いたびまん性肝疾患の線維化評価手法の検討

A method of liver fibrosis estimation based on two Rayleigh distributions

五十嵐 悠1, 江塚 大史2, 山口 匡3, 蜂屋 弘之4

Yu IGARASHI1, Hiroshi EDUKA2, Tadashi YAMAGUCHI3, Hiroyuki HACHIYA4

1東京工業大学制御システム工学科, 2千葉大学大学院融合科学研究科, 3千葉大学フロンティアメディカル工学研究開発センター, 4東京工業大学理工学研究科

1Department of Control and Systems Engineering, Tokyo Institute of Technology, 2Graduate School of Advanced Integration Science, Chiba University, 3Research Center for Frontier Medical Engineering, Chiba University, 4Graduate School of Science and Engineering, Tokyo Institute of Technology

キーワード :

【目的】
エコー信号の振幅分布特性は媒質中の散乱体分布を反映するため,病変進行による組織性状の変化がエコーの振幅分布特性に強く影響を及ぼしていると考えられている[1].Q-Q確率プロットによる解析により,正常肝のエコー信号の振幅分布特性は傾き2の直線で表現されるが,病変肝からのエコー信号の振幅分布特性は,直線性を失う結果になる[2].
本研究では,病変肝を正常肝・線維組織の振幅分布の組み合わせでモデル化し,Q-Q確率プロットを用いて各病変進行度においての評価パラメータの変化を検討する.また,臨床データ(新犬山分類よりF0〜F4の病変肝データ)を用いて,評価パラメータの変化との関係性を検討し,評価パラメータから病変進行度推定の可能性を検討する.
【方法】
正常肝などの,散乱点となる組織が密かつ均一に分布している組織から得られるエコー画像は,スペックルパターンと呼ばれる干渉縞が発生する.その振幅分布特性はレイリー分布になる.ここで,病変肝のエコー信号の振幅分布を低分散のレイリー分布の正常肝組織と高分散のレイリー分布の線維組織との2種類からモデル化し,その組み合わせにより,病変肝の振幅分布特性を表現する.
評価パラメータはQ-Q確率プロットの結果に対して,分岐点(Q-Q確率プロットと2本の回帰直線のRMSEが最小となるように決定した点)を境に最小二乗法により2本の回帰直線を引き,その結果得られる低振幅部回帰直線の勾配,高振幅部回帰直線の勾配,2本の回帰直線の交点(X, Y)の4個とする.
【結果】
病変肝の振幅分布特性のモデル式から,混在率・分散比と評価パラメータの関係を求めた.その結果,4個の評価パラメータから混在率・分散比を推定できた.
臨床データを用いてQ-Q確率プロット解析を行い,評価パラメータを算出し,病変肝の振幅分布特性のモデル式から導いた評価図にプロットしたところ,病変進行に伴い評価パラメータによるプロットが分散比の大きな領域に移動する傾向を示した.また,血管壁,肝臓壁を含む場合,分散比がより高くなる傾向を示した.これにより,評価パラメータから病変肝の線維化を定量的に推定できる可能性が示された.
【参考文献】
[1]Yamaguchi, Jpn. J. Appl. Phys., 37, 3093-3096, 1998
[2]江塚 他,日超医第81回学術集会,81-A032, 2008