Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

奨励賞演題
体表

(S288)

B-modeにて濃縮のう胞を疑う病変の検討

Examination of the breast lesions that doubts complex cysts

伊藤 吾子

Ako ITOH

日立製作所日立総合病院外科

department of surgery, HItachi general hospital

キーワード :

【はじめに】
超音波検査機器の発達により5mm前後の低エコー腫瘤の発見は容易となり,濃縮のう胞を疑う病変が指摘されることが増えた.乳癌検診に超音波が取り入れられるようになれば,更に増加することが予想される.
このような病変に対するColor DopplerやElastography追加の効果,および患者医療従事者双方にメリットのある対処法について検討した.
【対象・方法】
2004年7月〜2007年5月までに当院受診し,初回B-mode検査にて濃縮のう胞が疑われ,穿刺吸引細胞診や後の経過観察にて濃縮のう胞と確認された80例.および初診時濃縮のう胞が疑われたが精査にて乳癌と診断された13例.それぞれのColor Doppler所見,Elastography所見について検討した.
【結果】
濃縮のう胞ではColor Dopplerにてavascular;69例(86.3%),hypovascular( 辺縁などに若干の血流を認めるもの);11例(13.8%)であった.ElastographyではScore1;5例(0.6%),Score2;22例(27.5%),Score3;21例;(26.2%),Score4;29例(36.3%),Score5;4例(0.5%)であった.
乳癌症例ではColor Dopplerにて avascular;2例(15.4%),hypovascular;2例(15.4%),vascular〜hypervascular;9例(69.2%)であり,ElastographyではScore3;3例(23.0%),Score4;10例(77.0%)であった.
【考察】
濃縮のう胞疑い症例に対し,Color Dopplerは有用であり,内部に明らかな血流を認める症例は精査が必要と考える.Elastographyは癌の拾い上げに役立つことはあるが,内容物の濃縮の程度によって所見が異なり,偽陽性症例が多かった.
以上よりB-modeで濃縮のう胞が疑われる場合には,Color Dopplerを加え,内部に血流が見られれば穿刺吸引細胞診などの検査を行うことが必須と考える.血流が乏しくてもElastographyでScore3以上であり精査をおこなったところ癌であった症例も数は少ないがあったため,「濃縮のう胞が疑われますが念のため」と言って穿刺吸引細胞診を行うことは少なくない.濃縮のう胞を疑っているのであれば,23G針で1回だけ穿刺吸引しミルクかす状のものが引ければ,その場で「濃縮のう胞である」という確定診断がつき,以後の頻繁なfollowも不要となり患者,医療従事者双方に安心感が生じる.なお,B-modeで濃縮のう胞が疑われ,Color Dopplerで血流なく, ElastographyでScore1,2である場合には経過観察でよいと考える.