河本 敦夫¹, 柿崎 大², 秦野 直³, 石井 克也¹

Atsuo KAWAMOTO¹, Dai KAKIZAKI², Tadashi HATANO³, Katsuya ISHII¹

¹東京医科大学病院放射線診断部, ²東京医科大学放射線医学教室, ³東京医科大学泌尿器科学教室

¹Department of Diagnostic Ultrasound, Tokyo Medical University, ²Department of Radiology, Tokyo Medical University, ³Department of Urology, Tokyo Medical University

キーワード :

【目的】
精巣腫瘍における超音波像は，内部性状に特有のパターンを持たない多彩な像を示すことが言われている1）．近年，高周波探触子においてもTissue Harmonic Imaging（THI）やCompound Imagingの手法が導入され，空間分解能ならびにコントラスト分解能は大幅に向上した．また装置パフォーマンス上昇により低流速におけるカラードプラ法の感度も改善している．これらを踏まえ，今後の精巣充実性腫瘍の超音波診断に役立てることを目的として超音波分類の可能性を探った．
【対象】
2000年9月から2008年11月の間に，術前に超音波検査が施行され，組織・免疫学的検索がなされた精巣腫瘤43例を対象とした．最終病理診断はセミノーマ（SGCT）20例，非セミノーマ（NSGCT）12例（胎児性癌3例，成熟奇形腫1例，複合型8例），Leydig細胞腫1例，リンパ・造血器腫瘍4例（悪性リンパ腫2例，形質細胞腫1例，白血病1例），付属器由来腫瘍4例（腺腫様腫瘍3例，腺癌1例），表皮嚢胞2例である．
【方法】
1）形態的分類：病巣形状，均一性，嚢胞成分，粗大石灰化巣の有無に着目し，A）結節型：楕円から分葉状形態，内部均一な低エコー，B）地図型：斑状ないし地図状形態，内部均一な低エコー，C）嚢胞型：嚢胞成分を内包，D）石灰化巣型：音響陰影を伴う石灰化巣を内包，E）混合型：嚢胞や石灰化巣の混在，あるいは二種類以上の明らかにエコーレベルの相違する成分からなる，F）腺外型，精巣白膜外病変を疑うもの，の6タイプに分類した．2）ドプラ分類：正常実質血流を基準にhypervascular，hypovascular，avascularに分類した．超音波診断装置は，Siemens Elegra，または東芝Aplio XV，探触子は，7.5L40，PLT805-AT，撮像法は，Phase-inversion THI 4.5/9 MHz，Differential THI 9MHzを用いた．
【結果】
形態的分類では，A）結節型： SGCT 11例，Leydig細胞腫1例，付属器由来腫瘍1例，表皮嚢胞1例，B）地図型：SGCT 7例，リンパ・造血器腫瘍4例，C）嚢胞型：SGCT 2例， NSGCT 5例，D）石灰化巣型：NSGCT 3例，E）混合型：NSGCT 4例，表皮嚢胞1例，そしてF）腺外型：付属器由来腫瘍 3例であった．ドプラ分類では，hypervascular：SGCT 20例，NSGCT 9例，リンパ・造血器腫瘤4例，hypovascular：NSGCT 2例，Leydig細胞腫 1例，付属器由来腫瘤 4例，avascular：NSGCT 1例，表皮嚢胞 2例であった．
【考察】
SGCTは，結節型11例（55％），地図型7例（35％），嚢胞型2例（10％）に分類でき，均一な低エコー病巣とhypervascularが特徴である．嚢胞型の2例は鬱血・壊死を反映していた．NSGCTは，嚢胞型5例（42％），石灰化型3例（25％），混合型4例（33％）と従来の報告同様2），内部の不均一性を反映していた．リンパ・造血器腫瘍は，全例地図型かつhypervascularでSGCTとの相違は見られず，年齢分布等に頼らざるを得ない．Leydig細胞腫と表皮嚢胞はカラードプラで鑑別可能であった．付属器由来腫瘍は，詳細な検索により腺外病変の判別は可能と思われた．
参考文献：1）沖原宏治，中村晃和，水谷陽一，ほか．STATE OF THE ART 精巣腫瘍．Jpn J Med Ultrasonics. 2005; 32:167-75. 2）Dogra VS, Gottlied RH, Oka M, etal. Sonography of the Scrotum. Radiology. 2003; 227: 18-36.