Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

奨励賞演題
産婦人科

(S287)

子宮頸部elastographyに関する基礎的研究

Basic studies on uterine cervical elastography

小松 篤史1, 上妻 志郎1, 山口 俊一1, 砂川 空広1, 吉田 史朗1, 兵藤 博信1, 菊池 昭彦2, 亀井 良政1, 武谷 雄二1

Atsushi KOMATSU1, Shiro KOZUMA1, Shunichi YAMAGUCHI1, Sorahiro SUNAGAWA1, Shiro YOSHIDA1, Hironobu HYODO1, Akihiko KIKUCHI2, Yoshimasa KAMEI1, Yuji TAKETANI1

1東京大学女性診療科・産科, 2長野県立こども病院総合母子周産期医療センター

1Obstetrics and Gynecology, The University of Tokyo Hospital, 2Departmant of Obstetrics, Center for perinatal Medicine, Nagano Children's Hospital

キーワード :

【目的】
Real-time Tissue Elastography(以下elastography)は超音波を用いて組織弾性の分布をリアルタイムに映像化する組織弾性イメージング技術であり,乳腺・甲状腺などに比べて産科・婦人科領域ではあまり用いられていない.
 内診により子宮頸部の硬度を評価することは産科臨床上重要であるが,検者の主観により強い影響を受けるため,より客観的な計測法の開発が望まれている.我々はelastographyを用いて子宮頸部の硬度の評価を行い,その有用性と問題点について第80回日本超音波医学会学術集会で報告した.
 問題点として1). Region Of Interest(以下ROI)内での相対的な組織弾性の分布をイメージ化したものであることから,絶対的な組織弾性を表していない可能性があること,2).elastographyでは圧迫操作が必要であり,検者の圧迫法により結果が影響を受ける可能性があること,などが挙げられる.
 そこで今回我々はROIの設定方法及び圧迫操作の方法がelastographyの結果に及ぼす影響について,子宮頸部ファントムを用いて検討した.
【対象と方法】
 妊娠中の子宮頸部elastographyの結果に基づき,子宮頸部を5つの領域から成る構造であると想定し,それぞれの領域に異なる硬度とBモード像を有する子宮頸部ファントムを作製(OST株式会社による)した.子宮頸部の圧迫には経腟超音波プローブに装着できるバルーン(株式会社日立メディコ作製による)を用いた.
 ROIの設定はA:子宮頸部全体・B:子宮頸部前唇のみ・C:子宮頸部前唇のうちプローブ直下のみの3通りとし,得られた結果を3群間で比較した.比較には子宮頸部中央部における正診率(面積比)を用いた.圧迫方法については,A:ゆっくり大きく圧迫する(2秒間に1回程度)・B:早く細かく圧迫する(1秒間に3回程度)の2通りで行い,組織弾性イメージングの評価が可能であった(カラーがのった)時間の割合を比較した.子宮頸部elastographyで得られた動画をDVDに記録し,Adobe Premiere Elements Ver.4.0にて静止画に変換(15Fr/sec.)した.色の分析にはImage-Pro PLUS Ver.6.0を用いた.超音波診断装置は株式会社日立メディコ製 EUB-8500を使用した.
【結果と考察】
 ROIの設定法による比較では,子宮頸部中央部を正確に硬い(青)と評価した割合はA:47.9±20%・B: A:47.9±10%・C:91.6±5%であり,CではA・Bそれぞれに対して有意に正確な組織弾性分布を示していた.また圧迫方法に関しては組織弾性イメージングの評価が可能であった(カラーがのった)時間の割合はA:36.97%・B:64.30%であった.
【結論】
 子宮頸部elastographyではROIの設定により異なる結果が得られることが明らかとなり,正確な評価には標的を絞った一定のROIを設定する必要がある.また圧迫方法については早く細かい圧迫操作が組織弾性分布を評価するのに適していると考えられた.