Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

奨励賞演題
消化器

(S286)

Gd-EOB-DTPAによるMR検査で肝細胞造影相のみ検出された結節のCEUS像

Evaluation of CEUS imaging of the nodule detected only in the hepatobiliary phase of MR imaging with Gd-EOB-DTPA

乙部 克彦1, 竹島 賢治1, 高橋 健一1, 小川 定信1, 橋ノ口 信一1, 川地 俊明1, 熊田 卓2, 桐山 勢生2, 豊田 秀徳2, 金森 明2

Katsuhiko OTOBE1, Kenji TAKESHIMA1, Kenichi TAKAHASHI1, Sadanobu OGAWA1, Shinichi HASHINOKUCHI1, Toshiaki KAWACHI1, Takashi KUMADA2, Seiki KIRIYAMA2, Hidenori TOYODA2, Akira KANAMORI2

1大垣市民病院診療検査科, 2大垣市民病院消化器科

1Department of Clinical Research, Ogaki Municipal Hospital, 2Department of Gastroenterology, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

【目的】
Gd-EOB-DTPAは肝細胞特異性造影剤であるため造影剤注入20分後の肝細胞造影相では,肝細胞の有無や胆汁産生機能の評価が可能であり,肝腫瘍の存在診断に期待されている.今回,我々は肝細胞造影相でのみ検出された結節についてCEUS(contrast enhanced ultra sound)像とGd-EOB-DTPA MR像および病理組織所見と対比した.
【対象】
対象は,Gd-EOB-DTPAによるMRI検査を施行した368例のうち,MRIのDynamic-studyで周囲肝と等信号でかつ肝細胞造影相で信号の変化を認めた8症例8結節で,内訳は高分化型肝細胞癌が3結節,診断に至らず経過観察となった5結節である.平均腫瘍径は14.4mm(10〜18mm)であった.
【方法】
使用超音波装置は,TOSHIBA社製Aplio XGを用い,腫瘍下縁にfocusを設定し,ソナゾイドを注入後,約60秒間を血管相として腫瘍染影を観察後,10分後に後血管相を撮像し,周囲肝とエコーレベルを比較した.MRIは造影前(T1WI),Dynamic-study(4相),T2WI,肝細胞造影相の順に撮像し,Dynamic-studyはBOLUSTRAK法で行い,肝細胞造影相は造影剤注入20分後に撮像した.画像評価は,CEUS像と肝細胞造影相所見を対比し,病理組織学的分化度は切除標本と肝生検で行った.
【結果】
1. Gd-EOB-DTPAによるDynamic-studyでは全例周囲肝と等信号を示したが,CEUSの血管相では8結節中7結節(88%)に血流の変化が見られ,多血性が2結節(29%),乏血性が5結節(71%)であった.このうち多血性の1結節,乏血性の2結節,計3結節(43%)が高分化型HCCと病理診断された.
2. Gd-EOB-DTPAによる肝細胞造影相で1結節が高信号,7結節が低信号を示したが,CEUSの後血管相では1結節(12.5%)が低エコーを示すのみで,7結節(87.5%)は周囲肝と等エコーであった.また低エコーを示した1結節は高分化型HCCであった.
【考察】
高分化型肝細胞癌と診断された3結節(38%)は,Gd-EOB-DTPAの肝細胞造影相によりすべて存在診断がなされ,早期の肝細胞癌を高い感度で,存在診断できる可能性が示唆された.これに対しCEUSでは,従来から報告されているように,クッパー細胞の低下がほとんどみられない高分化型肝細胞癌などは,欠損像を呈する場合がほとんど無く,後血管相における存在診断に関しては感度が劣っていると思われた.しかし血管相においては,8結節中7結節(88%)に血流動態の変化を捉え,うち3結節(43%)が高分化型肝細胞癌と診断され,動門脈血流の変化に対する感度とリアルタイム性の点においては,他のモダリティーより鋭敏で優れていると思われた.