Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

奨励賞演題
消化器

(S285)

小腸腫瘤性病変の超音波像について−血流動態的評価も含めて−

Ultrasonographic findings of small intestinal tumor. Evaluation of intratumoral hemodynamics with color Doppler imaging and contrast-enhansed US.

岩崎 信広1, 河南 智晴2, 杉之下 与志樹2, 岡田 明彦2, 小畑 美佐子1, 杤尾 人司1, 簑輪 和士1, 猪熊 哲朗2

Nobuhiro IWASAKI1, Chiharu KAWANAMI2, Yoshiki SUGINOSHITA2, Akihiko OKADA2, Misako OBATA1, Hitoshi TOCHIO1, Kazushi MINOWA1, Tetsurou INOKUMA2

1神戸市立医療センター中央市民病院臨床検査技術部, 2神戸市立医療センター中央市民病院消化器センター内科

1Abdominal Ultrasonography, Kobe City Medical Center General Hospital, 2Gastroenterology, Kobe City Medical Center General Hospital

キーワード :

【はじめに】
小腸の腫瘤性病変には様々なものがあり,下血や腸閉塞といった症状で発見される場合が多い.しかし,病変の解剖学的位置から上部・下部内視鏡検査では評価できず,組織生検などによる術前診断は困難な場合が多い.近年ダブルバルーン法などを用いた小腸内視鏡検査の進歩により,質的診断が可能となってきているが,その手技は熟練した技術や装置の普及など,まだまだルーチン検査の域には達していない現状にある.一方,USは体外から容易に腹部全体を観察できるため,血流動態的評価などから質的診断に迫れる場合がある.今回,各種小腸腫瘤性病変の超音波像について,ドプラや造影エコー検査を用いた血流動態の評価も含めて検討したので報告する.
【対象と方法】
対象は十二指腸から空腸までの範囲内に腫瘤性病変が認められた29例.内訳は小腸癌4例,悪性リンパ腫12例,GIST8例,脂肪腫3例(脂肪腫症1例含む),動静脈奇形1例,血腫1例である.方法はBモード法にて腫瘤の内部性状を観察し,次いでドプラ法を用いて血流の多寡や血管構築パターンなどを含めた血流動態評価を行った.さらに,可能な症例については,ソナゾイドを用いた造影超音波検査を施行した.
【結果および考察】
原発性癌ではBモード法にて内部不均一な充実性腫瘤像を呈し,多方向から流入する不整な血管構築像が捉えられた.悪性リンパ腫では,壁内はきわめて低エコー像を呈し,造影USでは腫瘤内を貫通する太い血管,次いで樹枝状の血管構築が描出され,その後全体が濃染された.GISTでは,多方向から腫瘤全体が早期に造影され,壊死領域がある場合は明瞭な欠損域として描出された.脂肪腫では腫瘤辺縁のみが早期に造影され,中心部はほとんど造影されなかった.血腫では全く造影されずその診断は容易であり,さらに血腫内の微量な出血に関しても検出可能と考えられた.今回,Bモードでの描出が不良な症例に対しては,ソナゾイド水溶液を直接管腔内に注入することで,腫瘤が明瞭に浮かび上がり,詳細な観察が容易となった.以上より,小腸腫瘤性病変における超音波診断では,Bモードに加え,ドプラや造影USを併用することにより,質的診断に有用な情報を付加できるものと考えられた.
【結語】
小腸腫瘤性病変に対する体外式USは,ドプラ法や造影USなど血流動態の評価が可能であり,きわめて有用な検査法であると考えられた.