Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

奨励賞演題
消化器

(S284)

大動脈弁逆流速度によるrelaxationとcomplianceの評価

Aortic valve regurgitant flow reflects left ventricular relaxation and compliance separately.

渡部 朋幸1, 高野 真澄2, 竹石 恭知2

Tomoyuki WATANABE1, Masumi IWAI-TAKANO2, Yasuchika TAKEISHI2

1医療生協わたり病院内科循環器科, 2福島県立医科大学内科学第一講座

1Division of Cardiology and internal medicine, Health Coop. Watari Hospital, 2Department of First Internal Medicine, Fukushima Medical University

キーワード :

背景
左室拡張能には左室relaxation,左室・左房compliance,および左房圧が関与している.組織ドプラ法による拡張早期僧帽弁輪部後退速度(e’)はrelaxationを反映する.また,complianceの評価法は様々な指標が提唱されているが,未だ定まっていない.一方,大動脈弁逆流(AR)は等容拡張期に生じ,拡張末期まで持続する.拡張不全患者は高齢者に多く,また加齢に伴いARは増加するため,AR速度波形を利用した拡張能評価が可能であれば,臨床上有用である.
仮定
AR開始より一定の速度に達するまでの時間及び単位時間あたりAR速度変化(dVel/dt)はrelaxationを反映し,拡張末期逆流速度はcomplianceを反映する.
目的
AR速度波形を用いて左室拡張能を評価可能か否か,検討すること.
対象
AR患者71名(平均年齢77±10歳,女性55%).左室重量係数(LVMI)と相対壁厚(RWT)より左室肥大の程度を正常(N群: n=15),求心性リモデリング(CR群: n=27),求心性肥大(CH群: n=18),遠心性肥大(EH群: n=11)に分類した.心房細動,高度AR,二尖弁患者は除外した.
方法
1)左室relaxationの指標として,ARt0-1 (msec, AR開始から速度が1m/sに達するまでの時間)およびAR dVel/dt (m/s2, AR最大速度に達するまでの時間あたりの速度変化)を求め,全例におけるLVMIおよびe’との関係を検討した.また心臓カテーテル検査施行例(n=19)において,左室時定数(τ)との関係を検討した.
2)左室complianceの指標として拡張末期大動脈弁逆流速度(ARedVel)を測定し,E/e’ (E/e’低値群:E/e’<8, E/e’高値群: E/e’>15 ),左室拡張末期圧(LVedp: n=19)との関係を検討した.
結果
1) 4群間において,ARt0-1及びARdVel/dtの有意な差を認めた[ARt0-1; N: 14.2±9, CR: 7.0±8, CH: 14.3±9, EH: 21.1±13. ARdVel/dt; N: 95±37, CR: 62±30, CH: 56±28, EH: 53±18, 各々P<0.001, ANOVA].LVMIとARt0-1の間に有意な正の相関を認めた(r=0.6, P<0.01).e’とARt0-1及びARdVel/dtの間にそれぞれ有意な相関関係がみられた(ARt0-1: r=-0.45, P<0.01, ARdVel/dt: r=0.3, P<0.05).ARt0-1およびARdVel/dtはτとの間にそれぞれ有意な相関関係を認めた(ARt0-1: r=0.62, P<0.01; ARdVel/dt: r=-0.53, P<0.05).
2) ARedVelはE/e’低値群においてE/e’高値群と比し有意に高値(E/e’低値群vs E/e’高値群: 2.0±0.9 vs 2.9±0.7, P<0.05)であり,LVedpの間に正の相関を認めた(r=0.48, P<0.05).
結語
AR速度波形を解析することにより拡張能評価が可能であり,ARt0-1及びARdVel/dtは左室relaxationを,ARedVelは左室complianceを反映する指標である.