Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

奨励賞演題
循環器

(S283)

ソナゾイドを用いた経頭蓋超音波検査による脳血流定量を含めた脳血管評価法の確立

Transcranial contrast-enhanced ultrasonography with sonazoid in the semiquantitative evaluation of cerebral blood flow

斎藤 こずえ1, 平井 都始子2, 上野 聡1

Kozue SAITO1, Toshiko HIRAI2, Satoshi UENO1

1奈良県立医科大学神経内科, 2奈良県立医科大学奈良県立医科大学中央内視鏡・超音波部

1Department of Neurology, Nara Medical University, 2Department of Endoscopy and Ultrasound, Nara Medical University

キーワード :

【背景と目的】
従来脳血管を評価する方法としては,MR angiographyなどの血管描出画像とRI検査による脳血流評価法が挙げられる.第二世代超音波造影剤ソナゾイドは低音圧で共鳴することにより長時間安定した造影効果が得られる特徴を生かして,従来困難であった脳実質内微細血管構造や,灌流画像の定量化により血管構造と脳血流定量を,同時にかつリアルタイムに評価できる従来よりも優れた評価法となりうる可能性を秘めている.今回われわれは,健常者と,内頸動脈系主幹動脈閉塞疾患患者に対しソナゾイドを用いた経頭蓋超音波検査を行うことで,脳実質内微細血管構造の評価法を確立するとともに,健常者と疾患患者群を比較することで脳血流定量評価法を系統的に確立することを目的とした.
【方法】
対象は側頭windowの確認できた健常ボランティア11名と内頸動脈もしくは中大脳動脈に高度狭窄または閉塞を有する患者11名.GE Healthcare社製LOGIQ7,3MHzセクタプローブを使用し,造影ハーモニックモード(coded-phase inversion)を用いた.MI値0.4前後,フォーカスを8cmに設定し,0.01ml/Kgのソナゾイドをボーラス静注した.側頭window からFirst Pass(FP)としてリアルタイムで静注後40秒程度観察後,高音圧でburst後再灌流を観察するflash replenishment imaging(FRI)を数回施行した.①同一断面における数秒間の造影像をキャプチャーすることにより微細血管像を得た.②Time intensity curve(TIC)を側頭葉の中大脳動脈領域(MCA)と後大脳動脈領域(PCA)にROIをおいて作成し,1)FP時にはピーク輝度(PI)と流入開始からピークまでの時間(TAP)を,2)FRI時においては,burst時の輝度差(ΔINTFRI)とburstから再灌流までの時間(ΔTFRI)を測定項目とした.これらの項目をMCAとPCAの領域間,FRI時においてはさらに左右間で比較した.さらに,アセタゾラミド1g静注10分後に再度同様の評価を行い,投与前後を比較することで各個人内での機能的評価となる血管予備能を評価した.最後に,疾患群を健常群と比較することで,疾患評価法としての確立を行った.
【結果】
①FP,FRI時共に,リアルタイムに脳皮質内に流入する血流を観察でき,キャプチャーにより側頭葉皮質や延髄穿通枝などの微小血管像の構築が可能であった.②脳血流定量評価については潅流画像のTIC解析に基づき以下のような結果を得た.1)FP時,健常群では,PI,TAPともに,MCA,PCA領域間(MP間)で差はみられなかった.一方,疾患群では,PCA領域に比してMCA領域でPI値の低下,TAPの延長が見られた.2)FRI時,健常群では,ΔINTFRI,ΔTFRI,ともにMP間で差はなく,また左右ウィンドウ間でも差はみられなかった.一方,疾患群では,PCA領域に比してMCA領域で,ΔINTFRIの低値とΔTFRIの延長を認めた.アセタゾラミド負荷による血管反応性の評価においては,健常群では,投与後FPではMP間差なく,PI値上昇,TAP短縮し,FRIではMP間,左右差なくΔINTFRI増加とΔTFRI短縮したのに対し,疾患群では投与後にMP間でみられたTAPの延長がさらに増大した.
【結論】
経頭蓋超音波検査にソナゾイド造影を用いることで,リアルタイムに主幹動脈とともに脳表や穿通枝などの微細血管像の構築までできる今までにない詳細な血管評価法となりうる.また,FPとFRIによる灌流画像を用いてTICによる解析をおこなうことで,両側側頭ウィンドウからの脳血流の定量的評価が可能となった.脳血管閉塞疾患患者ではPCA領域に比べてMCA領域の脳血流低下が定量的に評価できた.アセタゾラミド負荷を行うことで血管予備能の評価も同時に簡便に行える方法を確立できた.今後,臨床の現場でも頭頚部血管閉塞疾患患者の予後や治療法の選択を行うための検査法として広く用いることができると考えられる.