Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

ライブセッション
ライブセッション12
甲状腺結節のインターベンション

(S276)

甲状腺結節に対する経皮的エタノール注入療法

Percutaenous Ethanol Injection Therapy for Benign Thyroid Nodules

宮部 理香

MIYABE

東泉クリニック外科

キーワード :

甲状腺疾患に対する経皮的エタノール注入療法(Percutaenous Ethanol Injection Therapy, PEIT)は,現在,甲状腺嚢胞と機能性結節のみが保険適応となっている.しかし,頸部に傷を作らず結節の縮小を望む美容的適応や,外来通院で行えるという簡便性より,非機能性の結節性甲状腺腫に対しても広く行われている.
嚢胞性結節に対しては,嚢胞内溶液が吸引可能なら可能な限り吸引し,高濃度なエタノールを注入,拡散させて吸引するという方法で行う.これを繰り返すことによって高濃度なエタノールを留置し,嚢胞の縮小を図っている.
充実性結節に対しては,明らかな栄養血管が確認できない場合には,充実部にエタノールを散布する方法で行う.流入血管が確認できた場合,カラードプラガイド下にエタノールとリピオドールの混合液を注入し,血管を塞栓するという方法で行っている.これにより効率のよい縮小が期待できる.部分的に嚢胞変性を来した結節などは,嚢胞部の洗浄・ドレナージと充実部分への散布・塞栓を同時に施行し,1回の治療で有効な効果を得られるように工夫している.
当院では通常外来通院で行っているため,1回の治療で注入,留置するエタノールの量は2〜3cc程度に留めている.治療の間隔は1カ月程度で,充実性結節に対しては内部の支配的な栄養血管が消失した段階で,患者の症状や美容的満足度に応じ治療を終了するという形をとっている.
多くの症例に対しPEITを行っていると,効果が十分得られず別の治療法を選択する症例に遭遇する.治療前の体積が大きいもの,充実部の血流が豊富な場合,栄養血管の流速が早い場合などが考えられる.明確な適応規定は設けていないが,治療開始時の慎重な検討と,治療中の効果判定を的確に行うことが重要である.
甲状腺は頸部に存在する臓器であるため,良性疾患に対し大きな傷を作ることへの抵抗が大きい患者が多いのが現状である.RFAやHi-Fuの甲状腺疾患への適応が期待される.