Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

ライブセッション
ライブセッション11
ポータブルエコーの腹部・体表領域への応用

(S274)

ポータブルエコーの脳卒中領域への応用

Usefulness of portable ultrasonography for diagnosis and treatment of stroke

竹川 英宏1, 髙田 悦雄2

TAKEKAWA1, 2

1獨協医科大学神経内科脳卒中部門, 2獨協医科大学超音波センター

1, 2

キーワード :

[目的]
脳卒中診療はMRIなどが主たる検査だが,超音波検査はこれらの検査準備時間などに非侵襲的かつ簡便に評価ができる有効かつ必須の検査である.一般に頸動脈の動脈硬化の重症度,性状判断や狭窄診断,頭蓋内動脈の狭窄診断がなされるが,卵円孔開存などの右左シャントによる奇異性塞栓症の場合,シャント診断や下肢深部静脈血栓症の診断も必要となる.また,心機能評価を含めた経胸壁ならびに経食道心エコー図も重要である.このように実際の脳卒中診療においては,超音波検査にゆだねる部分が多いが,急性期の重症患者は検査室までの移動が困難であり,亜急性期においても運動機能障害例では検査室でのベッドへの移動に伴う転倒の危険があるため,ベッドサイドで簡便に検査を施行することが有効であると考えられる.
[対象と方法]
脳卒中患者を対象に,超音波検査室における検査とポータブルエコーによるベッドサイドでの検査を比較した.検査は日本超音波医学会認定専門医が施行し,対象部位は頸動脈を中心とし,症例により下肢静脈ならびに頸動脈による右左シャント診断を行った.また,超音波診断は,検査室ではDigital Imaging and Communication in Medicine(DICOM)を使用し,ポータブルエコーでは機械上で診断した.ポータブルエコーによる診断(プラークスコア,狭窄率診断など)と検査室での診断結果ならびに検査が必要と判断した時点から実際の検査開始までの時間を比較した.なお,脳卒中診療は全例,日本脳卒中学会認定専門医を中心とした脳卒中診療チームが初診時より担当した.
[結果と考察]
頸動脈におけるプラークスコアでは,検査室の結果を基準とすると,ポータブルエコーでは0.4から1.2の誤差があり,プラークスコアが低値である例が多く認められた.一方,狭窄率診断では,多少の誤差が生じていたが,臨床上問題となる50%以上の診断に差はなかった.右左シャントの診断は,ポータブルエコーで偽陽性が少数見られ,下肢深部静脈血栓症においても,一部の症例では検出が困難であったが,おおむね診断可能であった.なお検査後にDICOM(サーバ・クライアント)を使用し診断を行った場合は,検査室での診断と大きな差は認めなかった.検査開始時間では,検査室では検査が必要と判断した時点から,1時以上経過して検査が可能である例が多く,症例によっては翌日以降になる例もみられた.一方,ポータブルエコーでは,約15分以内に検査が可能であり,検査に要する時間は検査室で10分から15分であったが,ポータブルエコーでは20分程度であった.ポータブルエコーは診察時に持参が可能であり,また必要と考えた時の患者移動,検査室の予約が不要のため,速やかに検査が可能であったと考えられる.一方,検査室ではDICOMを利用し大きな画面で判断ができるが,ポータブルエコーの場合,緊急時は機械上の画面による診断となり,さらに入院患者が大部屋の場合,照明を暗くすることが困難であったため,検査時間が長くなり,見落としや測定ミスがあったと考えられるが,DICOMの使用により誤差を少なくできる可能性がある.
[結論]
脳卒中関連領域の診断では,ポータブルエコーの使用により,より早く検査が可能であり,診断率も高く,臨床上問題となるような頸動脈の高度狭窄に対しては非常に有効である.今後,ポータブルエコーのDICOM使用により,より一層の有効性が期待される.