Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

ライブセッション
ライブセッション5
私の超音波教育法(心臓)

(S265)

院外研修者における心エコー検査の教育方法の現状と問題点

Cardiac sonographer education for trainees from other institutions: current problems and future direction

川井 順一

KAWAI

神戸市立医療センター中央市民病院

キーワード :

 心エコー検査の診断精度は,検者の技量と経験に依存するため,精度の高い検査室を保っていくためには検者の教育・育成に重点を置く必要がある.検者が受ける教育には,大別すると院内教育,他病院などで研修を行う院外教育がある.
 院内教育では,研修医など心エコー検査に携わる医師や新人超音波検査士など心エコー検査を始めて間もない検者(初心者)が対象者であり,基本的には先輩や上司の指導のもとに初心者が実際に検査を行いながら必要な知識や検査テクニックを身につけ,一人でできるようになるまで段階を踏みながら教育を受ける.当院では,「先輩や上司の仕事を見て盗め」といった漠然とした教育ではなく,個人の能力に合わせて計画的に教育を行っている.具体的には,初心者が勉強したい症例について病態や検査のポイントを予習して,その日の検査の計画を立て(Plan),実際に検査をやってもらい(Do),指導者が検査を行うところを見て,どこが良くて,どこが改善するべきかを具体的に指導している(See).このようなマネジメント・サイクルのもとで院内教育を行えば,比較的短期間で効果的な教育が可能であると考えられる.また,定期的に医師と超音波検査士による合同カンファレンス(テーマを決めた勉強会や症例検討会など)を行っている.これにより,医師と超音波検査士の間で情報を共有することが可能となり,このことは心エコー検査の精度管理,診断能力の教育も併せて行うことができると考えられる.
 院外教育では,学会などが主催する講習会やハンズオン,さらには他病院での見学・研修によって院内教育だけでは得られない知識や検査テクニックなどを習得することができる.院外教育のメリットとしては,院外研修者が検査で判断に迷った症例,ちょっと相談してみたい症例が入ったビデオを持ち寄り,合同カンファレンスなどでアドバイスを受けることができる.これに対して院外教育のデメリットとしては,学生や新人技師,さらには中堅以上の技師など対象者の幅が広いことや,院外研修者によって研修目的が様々であることが挙げられる.例えば,心エコー検査の撮り方を学びたいという人もいれば,超音波検査士の受験のため症例を限定して検査させて欲しいという人もいる.また,学生など全く心エコー検査の経験がなく,今後も心エコー検査を行うかどうかわからないといい人もいる.さらに,院外研修者一人ひとりの研修期間が異なるため研修スケジュールを立てるのが難しいことなどが挙げられる.したがって,院外教育では,院内教育のように定まった計画表やマニュアルを作成することが難しく,院外研修者一人ひとりのレベルに合わせた教育をしていくことが必要となる.当院においては,院外研修者の受け入れに際して,今のところ院外研修者に対して満足のいくような教育方法が確立されていないのが現状である.
 以上のことから,このセッションでは,院外研修者の受け入れ先の施設として,「院外研修者に対してどのような教育をしていけばよいのか」について考えていきたい.