Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

ライブセッション
ライブセッション5
私の超音波教育法(心臓)

(S264)

私の超音波教育法(心臓) レベルアップ教育

Training Requirements for Echocardiography in Kagoshima University

水上 尚子

MIZUGAMI

鹿児島大学病院検査部

キーワード :

【はじめに】
心エコー検査は場所を選ばず,また患者への負担も少なく繰り返し施行できるため,心電図と並んで循環器診療には欠かせない非侵襲的な検査法となっている.心電図も心エコーも私たち臨床検査技師が携わる業務ではあるが,この両者の検査には大きな違いがあると考えられる.まず,第一に心電図検査は電極の装着位置さえ間違わなければ,誰が記録しても同じ結果が得られる普遍的な検査であるのに対し,心エコーは検査者の技量により得られる結果が大幅に変わってしまう危険性がある.第二に心電図検査では波形の判読を検査者の技師が行ったとしても,それを報告書という形では残さないが,心エコーでは検査者が検査の内容,結果を報告書で臨床側に伝えなければならない.つまり検査結果に対して明確で重い責任が検査者には課されることになる.当院では,心エコーの検査に携わる技師には,チーム医療の一員としての自覚と責任を認識することが重要であると考えており,常に臨床に役立つ情報を正確に伝える技師であること理想として教育をおこなっている.
【心エコーの検査に必要な知識】
心エコー検査の業務に携わる前に,当院では①心電図の波形が読める,②心音が理解できており,基本的な聴診ができる,③心内圧の圧波形と心時相を理解している,この3点を基本的知識として習得するようにしている.これらの基本事項が把握できていると,心エコーの画像やドプラ波形,各疾患の病態が理解しやすい.そこで心電図,心音図,心カテーテル検査などの業務を経験した技師が心エコーの業務に携わる技師として望ましい.
【心エコー画像の記録:探触子操作の習得】
心エコーの画像の記録では,①解剖に即した探触子の操作,②装置の適切な調整の2点を重要視している.特に①では,エコーの基本的な断面像をそのまま覚えるのではなく,探触子のあてる位置,ビームの方向により何故その断面が得られるのかを考え,理解するよう指導している.また胸部X線写真やCT写真など他の画像検査の基本的な判読も同時に学習し,解剖の理解に役立てている.②に関しては,美しくわかりやすい画像を記録するという,技師としてもっとも大事な点を意識し,装置の性能を充分に使いこなせるだけでなく,被検者の安全も考えた保守管理業務も確実に行えることを徹底している.これらの基本操作の習得にはまずは患者ではなく正常者やボランティアの被検者で技術の修練を積むことからはじめている.
【病態を学ぶ】
検査後には自分たちが提出した検査データがどのように臨床にいかされたか,また何が情報として重要であり,何が不足していたかなどを,臨床側のカンファレンスに参加し,フィードバックしている.その際,治療経過などの情報を臨床側から得ることは,病態の知識を深めるために非常に役立つ.技師は病態に対しての教育が不十分なため,心エコーで得られた情報に対して見当違いの考察や画一的な浅い考察をしてしまいがちである.カンファレンスは,エコーや検査所見だけでなく,患者個々の背景や問題点に対しての意識が重要視される臨床の考え方についても学ぶ貴重な機会であることを意識してほしい.
【おわりに】
臨床に役立つ情報が何かは,検査室の中にだけでは,なかなか見えてこない.チーム医療の一員として患者様の利益という同一の目的に立ち,自ら臨床側に情報を求め,また求められる情報を返していく姿勢が重要であると考える.